| 「悠希?」 オレは今夜こそ城と本物の恋人になるチャンスだと狙っていた。
 オレの夢だったコンサートを終え、興奮状態のままなら、城もきっと同じだろうと。
 「苦しいよぉ」
 力なく背中を拳で叩く。
 「…ごめん、この間…」
 そう言って叩くのを止めた。
 「分かっていたんだ、本当は。だけどさ、んっ…」
 黙っていると何時までもしゃべり続けそうだから、唇で塞いだ。
 途端に体中の力が抜けたような状態になった。
 歯の隙間に舌を差し込む。
 カタカタと歯を鳴らしていたけど、構っていられない状態だった。
 更に恐怖を煽ってしまうが、城の太ももに自分の下半身を押し付けた。
 すると、ビクッと城の身体が跳ねた。
 おずおずとオレの舌に城の舌が絡まる。それを飴玉を味わうかのように舐める。
 あ、本当に甘い。
 そんなことを感じながらゆっくり堪能する。
 味わい尽くしたところで唇を解放した。
 「ゆ…ぅき、いいよ?」
 俯いて小さく発した言葉は前回も聞いた。
 「今度はなにがあっても途中で止めない。」
 「…うん」
 何の躊躇いか少し悩んだけど構ってやる余裕がなかった。
 「あの…ね?」
 「うん。」
 「本当に、好き。悠希が好き。」
 うっ…やられたよ。完全に心臓を撃ち抜かれた。
 たった二文字なのに。
 城に言われただけでどうしてこんなに幸せなんだろう。
 「オレも、好きだよ。」
 
 
 
 そして。
 この晩、初めてオレたちは結ばれた。
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