61.深夜に何があったか
「悠希?」
 オレは今夜こそ城と本物の恋人になるチャンスだと狙っていた。
 オレの夢だったコンサートを終え、興奮状態のままなら、城もきっと同じだろうと。
「苦しいよぉ」
 力なく背中を拳で叩く。
「…ごめん、この間…」
 そう言って叩くのを止めた。
「分かっていたんだ、本当は。だけどさ、んっ…」
 黙っていると何時までもしゃべり続けそうだから、唇で塞いだ。
 途端に体中の力が抜けたような状態になった。
 歯の隙間に舌を差し込む。
 カタカタと歯を鳴らしていたけど、構っていられない状態だった。
 更に恐怖を煽ってしまうが、城の太ももに自分の下半身を押し付けた。
 すると、ビクッと城の身体が跳ねた。
 おずおずとオレの舌に城の舌が絡まる。それを飴玉を味わうかのように舐める。
 あ、本当に甘い。
 そんなことを感じながらゆっくり堪能する。
 味わい尽くしたところで唇を解放した。
「ゆ…ぅき、いいよ?」
 俯いて小さく発した言葉は前回も聞いた。
「今度はなにがあっても途中で止めない。」
「…うん」
 何の躊躇いか少し悩んだけど構ってやる余裕がなかった。
「あの…ね?」
「うん。」
「本当に、好き。悠希が好き。」
 うっ…やられたよ。完全に心臓を撃ち抜かれた。
 たった二文字なのに。
 城に言われただけでどうしてこんなに幸せなんだろう。
「オレも、好きだよ。」



 そして。
 この晩、初めてオレたちは結ばれた。