63.すれ違い
 会いたい。
 会いたい。
 キミニアイタイ。


「赤坂くんは衣装担当と聞いたのですがメンバーカラーとかあるのですか?」
 インタビュアーの聞きたいことはわかる。だけど、
「メンバーカラーってなんですか?」
と、返さなければならない。
「例えば赤坂くんは赤とか川崎くんは黒とか。」
 この人は今日のボクらの衣装を見て言っている。
「ないです。」
 一刀両断。
「衣装の時は敢えて誰がこの色とせずに似合うか似合わないかで決めています。」


「今日の城くん格好良かったよ!」
 ラジオ番組の収録後、心くんがちょっと興奮気味にボクを讃えてくれた。
「そうかな?本当のことを言っただけなんだけどな?」
「それが良かったよ、うん。」
 ラジオ番組といえども、いつもだったら台本があって増上さんが受け答えを考えてくれる。だけど今日は
衣装のことだからボクがいつも思っていることを伝えたらいいって任せてくれたんだ。
 心くんと次の仕事へ向かう電車の中で、少しだけ自分の仕事に自信を持てた気がした。


 翌日も心くんと二人で雑誌の取材。
 これはいつも時間が掛かる。
 学校を最後まで出席してその後に行ったから帰りは深夜。
 翌々日も別の雑誌の取材。
「なんで二人なんだろ?」
 心くんも不満気だ。
「全然神宮寺くんと悠希に会えないのって、変だよね?」
「うん、変だよね?」
 もう3日目だ。
 スケジュールを見たら今後一週間、一切関わりがない。


 深夜。
≪会いたいよぉ≫
と、メールした。
 会えなくてもいい、声が聞きたい。


 返事がない。
 不貞腐れて寝ようとした瞬間だった。
 玄関でインターホンが鳴った。
 モニターをチェックすると、イライラしているのがわかる、神宮寺くんと悠希。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないよっ」
 言い終わる前に悠希の両腕がボクを抱きしめた。
 その横を強引に神宮寺くんが通り、心くんの部屋へ飛んで行った。
「二人は泊りがけでロケだと言われた。」


 事務所に、ばれた?
 でも、もう止められないよ。