64.家庭教師
 この間まで怒濤の勢いで仕事が入っていたのに、突然パタッと無くなった。
 増上さんに聞いても一つの戦略としか言われない。
 神宮寺くんと悠希には寛永さんがガッチリくっつく形で秒単位のスケジュール。どう考えてもバランスが悪い。
「その間に城くんは受験勉強頑張るように。」
 なんて、一番嫌なこと言われた。
「あの、受験する学校なんだけど…」
「選べる成績になったら聞く」
と、バッサリ袈裟懸け…。傷は深い。



トントン
 部屋のドアがノックされた。
「なあに?」
「入っていい?」
「どうぞ」
 心くんが心配してやってきた。
「帰ってきてから食事以外ずっと籠もってるから気になったんだ。」
「んー、どうしたら成績って上がるんだろう?」
「また珍しい質問だね。成績を上げるにはテストの点を取ること。あとは、勉強の方法を見つけること。慧くんに
聞いたんだけど、なんだかんだ言っても先生の言葉の中にヒントが隠れているんだ。それを見つけて自分の物
にするんだって。」
「なんか難しいなぁ。」
 心くんが苦笑する。
「桧川くんに教えてもらえれば問題ないのにね。」
「悠希はそういうタイプじゃないんだよね。自分のことは自分でするっていう…」
「城くんが可愛くおねだりすればきっと教えてくれるよ」
 え?可愛くおねだり?
「…城くん、今違うこと想像しなかった?」
「違うって?」
 シラをきる。
「毎晩教えてって、行ってごらんよ。」
「うん…」


「え?ここが解らない?今まで何を聞いてきたの?っていうかよく高校入れたね?」
 おーい、心くんっ、話がちがーう。
 悠希、全然優しくなーい。
 しかも、夜は帰りが遅いから朝5時って…眠いし。
 参った…。