| 「絶対にムリ、無理無理!」 ボクは両手を挙げてギブアップの体制を取った。
 「だって、学業優先でしょ?受験でしょ?レッスンでしょ?daysの仕事でしょ?それに映画なんて無理!」
 しかも、主演なんて。
 今まで演技なんてしたことがない。そんな人間がしゃしゃり出て良いはずがない。
 
 
 …ボクに拒否権はなかった。
 翌日から歌とは違う発声練習、基礎訓練が始まった。
 益々悠希とは会えないし、daysの仕事すら出来なくなっていった。
 
 
 「城くん、大丈夫?」
 心くんが心配そうな顔でボクを見ている…と言うのは解るけど何を言われているのか理解できていない。
 もう帰ってご飯を食べるのでさえ億劫になっている。
 「ねむい」
 それだけ伝えるとバタリとリビングのソファに倒れ込んだ。
 
 翌朝。
 何故かボクはベッドの中で寝ていた。
 あれ?
 確か、ソファで寝ちゃったような…。
 寝ぼけた頭を目覚めさせるべく顔を洗おうと思った。
 「あ、城くん、おはよう。よく眠れた?」
 心くんは朝から元気だ。
 「うん、ありがとー!心くん、ボク夕べソファで寝なかった?」
 「うん、ソファで寝ちゃった。だから桧川くんにお願いして運んでもらったよ。」
 え?悠希?
 「そっか…ありがとう。」
 会いたかった。
 会いたい。
 今、無性に悠希に会いたい。
 「どういたしまして。ちゃんと寝た?」
 ボクは振り返れなかった。
 だって振り返って違ったらガッカリする。
 すると、背後から抱き締められた。
 「引っ越し先が決まった。四人一緒だ。また四人で頑張ろう?」
 うん、うん。
 ん?
 「いいの?四人でも。」
 「四人だけどさ…二世帯マンションっていうのがあるんだ。そこにね、四人で移る。でもこれは会社の方針
 じゃないから自分たちで家賃は出すんだけどさ。」
 隣で心くんがニコニコと頷いている。
 「四人で目一杯働こう?」
 「うん!」
 
 
 
 そう、目一杯、働くんだ。
 …映画頑張れと、言われたんだよね(泣)
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