82.楽
「ところで、」
「ん?」
「悠希っていつ大学に行ってるの?」
「月に一回」
「え?」
「だって通信制だから」
「え?そんなのもあるの?」
「うん、あったの」
 普段はインターネットで講義を受けられて、月に一回点呼をとるような講義を受けに行くらしい。
「時代はどんどん便利になっているからね。」
 久しぶりに悠希の車で帰宅途中、全然色気のない話をして帰ってきた。
「ボクさ、社長に直接お願いしようと思うんだ。」
「何を?」
「受験、辞めさせてくださいって」
「そうか。城がそうしたいんならそれでいいと思う。」
「悠希は学校楽しい?」
「うん。普通に行けばよかったって思う。通信制だと友達増えないからね。来年、編入できないか学校に
相談してみるよ。」
 そんなに面白いのか…。
「別に、楽がしたいわけじゃないんだ。必要性を感じないだけなんだ」
 楽しそうに話す悠希にちょっとだけ嫉妬したので言い訳をした。
「必要性って言うんだったら行ってみてからでも遅くないんじゃないかな。折角のチャンスを自分の手で
奪わなくてもいいと思う」
 つくづく思うことは、daysの四人の中で、一番子供っぽい考えなのは自分だってこと。
「目的がなくてもいいのかな?」
「もちろん。楽しいことが一番だからさ」
 楽しい…そうか、楽しいのか。
「EasyじゃなくてHAPPYなんだね」
「お、城の口から英単語が出るようになった。成長してるね」
「え?」
 成長…そっか、ボクも成長しているんだ。
「ありがとう、悠希」
 運転する悠希の膝に、そっと手を置いた。
「仕事がひと段落して、大学に通うようになったら、車の免許取りに行こうかな…」
「ダメっ」
 悠希が大きな声で拒絶する。
「城はオレが送迎するから。だから危ないことはしないで」
 もうっ、悠希ったら過保護なんだからっ。