| 大学では演劇学科を専攻している。 しかし。
 一年では専門分野へは行かず、基本的なことを学ぶ。
 つまり。
 高校とあまり変わらない。
 入学式の後、教室に行くと…悠希がいた。
 「なんで?」
 「編入した」
 「どうして?」
 「同じ学部だったし、城が楽しそうだったから。」
 わぁ…。
 「嬉しい」
 素直にうれしい。
 悠希と一緒に学校に通ったのは一年。
 でも正確には半年くらい。
 ボクがみんなと合流したのは夏休み。
 それまでは別々に通っていたから中々会えなかった。
 「でも、折角一年頑張ったのに。」
 「楽しいほうがいいでしょ?」
 「うん」
 予想外のサプライズに、ボクはかなりテンションが上がってしまった。
 
 
 入学式の後、一通りの説明があって、その日はそれで終わり。
 翌日からいよいよ授業が始まる。
 殆ど授業の時間は同じだけれど、第二外国語と体育の選択科目が違った。
 「へー、悠希はドイツ語なんだ。ボクは中国語。」
 ちょっとビックリした。
 「授業の曜日が違うんだね。体育は同じだけど。」
 こちらも悠希はバレーボールで、ボクはテニス。
 そんな話をしながらレコーディングスタジオに二人で向かう…なんて新鮮な行為だろう。
 今までは一緒に行くといったら心くんだった。
 朝だって悠希が車を出してくれて、一緒に来る。
 まさか悠希が編入試験を受けているなんて知らなかったから、学生生活は一から友達を作って…なんて
 考えていたけれど…。
 ん?
 これだとボクには大学で友達が出来ないんじゃないか?
 なんか…本末転倒。
 「悠希。友達も作らないと学生生活謳歌できないよね?」
 「あ、ばれた?城に友達作らせない作戦だったんだけど。」
 運転中なので前を見ているけど、目が笑っているから本気じゃないよね?
 「高校時代のクラスメートも何人か来ているから、直ぐに友達は出来ると思うんだけど。悠希は逆に年下ばか
 りだから友達になりにくい?」
 「そんなことはないけどさ…最初の刷り込みは大事でしょ?」
 悠希の言う刷り込みの意味が分からない。
 「城が最終的にはオレを頼ってくれたらいいなていう願望…ごめん、ただの嫉妬。学生時代の友達は大事だ
 よな、そうだよな。」
 悠希が何か、自分に言い聞かせている。
 「明日から、もっと積極的に学生生活するからさ。今日だけは我慢して。…あー、オレって何時からこんなに辛
 抱できない性格になったんだろ?城のことだったらなんでも受け入れる、なんでも我慢する、いつまでも待てるっ
 て信じていたのに。」
 「悠希。」
 「ホント、ごめん。」
 「だーい好き。だからそんな卑屈になんないでよ。ボクの帰るところは悠希の腕の中だからさ…ってこっ恥かし
 いんだけど。」
 「うん…ありがと。」
 悠希が耳を真っ赤にして、照れ臭そうに笑った。
 悠希の運転する車は、レコーディングスタジオに着いた。
 これからは、daysの悠希と城として、仕事するぞー。
 車のエンジンを切ると、悠希は素早くシートベルトを外し、ボクの唇にキスを落とした。
 「恋人のオレも、忘れないで。」
 「忘れるわけないでしょ?ってか、こんな場所で、増上さんに見付かったらどうするんだよっ。」
 油断も隙もない。
 「だってオレたちアイドルだからさ、永遠に結婚はしないじゃないか。だったら二人の関係も公に出来ないんだか
 ら、ずっと秘密の恋人じゃないか。」
 そっか…前途多難だな。
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