95.ハードスケジュール
 無事に映画の撮影も終わり、シングルとアルバムの同時進行レコーディングも終わり。
 ホッと一息…と思っていたんだけど、違ったんだ。
 そう、ボクらには、コンサート!そして中間考査が待っていた。
 途中、シングルの発売が入るから、歌番組の出演もある。
 相変わらず忙しい毎日。
 でも基本は四人での仕事だから楽しい。
 ボクは四人での仕事が好きだ。
「城くん」
「ん?」
「時々、桧川くんと部屋を変わってもらってもいい?」 
「何?ボクが恋しい?」
「うん」
 満面の笑みで頷く。
 こんな時の心くんは年相応で可愛い。
「いいよ。おいで。」
 多分。神宮寺くんが放してくれないんだろうな。だから試験勉強が出来ないんだろうなぁ。
「…慧くんがね、ダブルベッドに買い替えたんだ。だから毎晩…」
「待って待って、心くんそれじゃあ身体を休める暇がないよ?」
「うん」
 かなり不憫だなぁ。
「城くんはどんな感じ?」
「どんなって…相変わらず別々に寝てるよ?見ての通り。」
 この部屋はシングルベッドが二つ置いてある。
「桧川くん不憫だなぁ」
「え?」
 そうなの?
 その晩、ボクたちは結構遅い時間まで試験勉強をしていた。


 午前中の講義を終え、悠希とボクはレッスン室へ急いだ。
 コンサートの振り付けを覚えるためだ。
「夕べ、神宮寺くんがかなりへこんでた。」
 だろうね。
「何か言ってた?」
「嫌われたって。」
「嫌われるようなことしたのかな?」
「その意見、オレも自信がないよ。城に嫌われるようなことってどんなことだろう?」
「悠希が?嫌われること?…ある。」
「なに?」
「ボクのこと、嫌いになること。」
「ないない、絶対にない。城が記憶喪失になってとってもイヤナ性格でオレのこと嫌いって言ったってオレは
嫌わない。」
 また大それたことを…。
「でも、人の気持ちって、」
「ないっ」
 断言した。
「じゃあ、ボクたちは大丈夫だね?」
「そうだな。」
 …なんか…ラブラブ?
「心くんはただ試験勉強がしたかっただけ。自分の部屋だと誘惑者がいるからね。」
「なるほど」
 レッスン室に到着すると、既に神宮寺くんが待っていた。
「おそいっ。心は6時間目まであるから、3時すぎないと来ない。」
「ごめんなさーい」
「すまん」
 やけに空気がピリピリしている…。


 その晩、心くんは自分の部屋に帰った。


 翌日は一日レッスン室。
 進行表を見ながら、順番を覚えて振りのつながりを決める。
 3曲通しの所、難しい。


 その夜は、悠希と一緒にお風呂に入った。
 …ちょっとだけ、エッチなこと、した。


 更に翌日。
 今日は心くんが午後から合流して、ジャケットの撮影とMVの撮影。
 心くんが来るまでに衣装合わせをする。
「城は色が白いからダーク系の方が映えると思うよ?」
神宮寺くんに言われて、白いインナーを手にしたけれど、紺に変更した。きっと、白は心くんのイメージ
なんだろうな。
「悠希は赤、俺はグリーンでどうかな?」
 神宮寺くんがボクに同意を求める。
「元daysのスタイリストさん、いかがでしょう?」
 最近は忙しくなったので、衣装はレコード会社の専属スタッフが用意してくれる。
 その中から着たい色や似あう形を選んでいく。
 今回はちょっと大人っぽい衣装が用意されていた。
「スーツっぽいけど…あ、七五三っぽいんだ。」
 馬子にも衣装ではなく孫にも衣装だな。
 とりあえず3人で立ち位置などを確認しながら、心くんを待った。


 ボクら4人は、仕事も学校もプライベートも、忙しい。


 今夜も、心くんはボクの部屋にお泊り。
「ねぇ、城くん。ちょっとだけエッチってどんなことするの?」
 …
 …
「スパイ?」
 ボクは心くんを部屋から放り出した。