97.絶賛公開中
 俺達、daysが初主演した映画が公開になった。
 客観的に見て、俺は女子受けするやたらとカッコいい役だ。
 悠希もカッコいいけど天然が入っているどこか憎めない奴だ。
 城は可愛い。ひたすら可愛い役。
 心は女子高生がキャーキャー言うタイプの男の子っていう感じだ。
 つまり、俺と心は女子受けを狙っている。
 …じゃあ、悠希と城のターゲットはどこなんだ?


「なんでわざわざ映画館に観に来たの?」
「映画館デート、いいだろ?」
 俺はこの映画を純粋に観てみたいと思った。
 だから心を誘ってデートのついでに映画鑑賞。これなら二人で来ても何の違和感もない。
 案の定、Twitterに俺らの名前が流れてきた。
「ちょっと耳元で話でもしてやれば喜ぶかな?」
と、耳元に囁く。
 俺らのすぐ後ろにいた女性が小さく悲鳴を上げた。
 …daysって本当に人気があるんだと、ちょっと感心した。
 座席もほぼ埋まっている。
 感動的だ。
 俺の夢はいつかでかい舞台でミュージカルスターとして、歌い踊ることだ。
 だけど、映画のミュージカル化は意外と進んでいない。
 もっと撮り方を変えたら、良いものが出来ると思うんだけどな…。
 舞台に立てたら、映画にも進出したい。
 でもそれは、daysから卒業してからでもいい。
 daysがいつまでもあるとは思っていない。
 それぞれの進む道が違ってきたら、俺たちは別々に進むべきだと思っている。
 心は、どんな道を進むのだろう…。


「わかったか?」
「うん。桧川くんと城くんは老若男女に受けるキャラクター設定だよね。」
「そうそう。城はプライベートそのままだけど悠希は違うよなぁ?」
「そうかな?桧川くんも可愛いよ?」
「でもさ…いつか僕達別々に活動するようになるのかなぁ…なんか寂しいね。」
「まぁ、いつまでも一緒ってことはないよな、きっと。だけど、今は四人での活動を楽しんでやろうぜ。」
 うん、と頷いたけれど、どこか寂しそうだ。
 確かにまだ二年弱しか活動していないから、現実的ではないのだろうけど、はっきり言って爆発的に
大人気…というわけではないから、会社でも長い期間で考えているということはないだろう。
 次の身の振り方も考えなくてはいけないよな…。
「心は、将来のことどう考えているんだ?」
「どうって…daysで人気が出ることしか考えてない。僕はdaysに…アイドルになりたくてここまで頑張って
来たんだから。僕は城くんみたいに器用じゃないからドラマとかに頻繁に出るのは難しいだろうし、バラエ
ティも苦手。だったら歌と踊りを頑張る。」
 心から歌を取り上げたら、何もなくなってしまうということか…。
「じゃあ、days、頑張ろう」
 そしていつか、一緒にミュージカルを目指していけたらいいなって思っている。
 俺は、心を手放すことは考えていない。
 だからそれなら同じ道を歩んでいくことを考えたい。
 心も幸いに歌と踊りを頑張るのなら、同じ道を進むことも可能だ。
「でもさ、城くんは本当に器用だよね。歌も踊りも演技も頑張ってる。今度は何をするんだろう?」
「コンサート」
「あ、そうだった」
 俺たちはリハーサル室へ向かった。


「映画観てきたんだ、どうだった?」
 城が瞳をキラキラさせて感想を聞く。それに対して心は丁寧に答えている。
「へー、そんな風に編集されているんだ〜」
 本当は公開前に試写会があるんだけど、俺等のスケジュールがどうしても合わなくて試写会は延
期になった。
「ファンの人の生の声が聞きたい」
と言って、悠希と城はまだ観ていない。
「生の声を聞くなら、こっそり観に行くのが絶対おすすめ」
「何で?」
「だって、僕等のファン以外も声も聴くことが出来るよ。」
 映画館では色々な番組を放映している。
 当然俺等以外の作品もある。
 そっちを見に来ている人たちは俺等の映画は見ない。
「そっか」
「それにね…」
 心は俺に聞こえないように耳打ち…しているつもりらしい。
「桧川くんと大っぴらにデートできるよ。」
 …俺の受け売りだ。
 城は
「その手があったか」
と、目から鱗だったようだ。