第二話  喜多邑 尋之
「先生、今日はうちに来る?」
 他の生徒達が聞いたら卒倒しそうな台詞を平気な顔で言い放つのは喜多邑尋之(きたむらひろひで)、行動心理研究会の部員である。
「兄貴は今日早番だからさ。」
 尋之の兄尋胤(ひろかず)は仁志の大学の同級生でこの県立柄凜木高等学校の卒業生であるのだがただの卒業生ではない。
 『大人の都合で押し付ける校則の改正』をやってのけ見事制服を廃止し、規定服に変更させた伝説の生徒会長なのだった。
 ちなみに規定服…ではあまり変わらないと思うかもしれないがジーンズなどカジュアルな服装でなければ良いという、かなり砕けた規定である。
 以前の制服でも可能だが尋之はいつも上はジャージで下は綿パンだったり意外と華美な服装はしない。自分でバイトでもしない限りオシャレなんてかなり難しいのだ。
 帰り道、尋之は仁志と腕を組む。わざとしているのだ。
「尋之、これはまずいからやめよう」
 一緒…という行為もまずいだろう?と尋之は思うがあくまでも目的は別にある。
「ねぇ、先生はタチ?ネコ?まぁ兄貴がネコってことはないだろうな。」
 尋之の言っている意味が解らない。
「だから!どっちが突っ込まれるのかってきいてるんだよ!」
「突っ込み?漫才?喜多邑と漫才なんかしないよ。」
「あほっ!セックスに決まってんだろ!」
「な、なんでお前に性交渉なんか…喜多邑と?」
 途端に真っ赤な顔になる。
「どうしたらそんな発想が出来るかな…喜多邑は…尋胤は親友だ。」
 尋之は気付いていた。兄がこの男に友情以外の感情を持っていることを。
「…やらして。先生とえっちしたい。ダメ?」
 思考回路が停止したようだ。
「明日、先生のマンションに行くから。」
 尋之は実力行使に出た。

 理科準備室は基本的に生徒は立ち入り禁止だ。
「嫌だっ。やめろっ…」
 口は否定しているが身体は愉悦を求めてしっかりと咥え込み離さない。
「ごめんね、先生。先生のマンションまで我慢出来なかったんだ…好きなんだ…」
 あとは黙ってひたすら腰を動かした。
 尋之の下で痛みを堪えながら、昨日の帰りに言われたことの意味を考えていた。
 尋胤は親友以上のものを抱えているのか…
 尋之に抱かれながら尋胤を思った。