第六話  恋占い
「先生は恋占いが得意なんだそうですね?私と南中道くんの相性をみてもらえませんか?」
 仮入部中の女子生徒が仁志を囲んでいる。やはり彼女達の目的は南中道のようだ。
「占いじゃないよ、相手の人が君に好意を抱いているかどうかを行動学的検知から検証して結果を導き出すんだよ。ちなみに南中道くんはまだ恋愛とか興味なさそうだよ。」
 仁志は今、嘘をついた。
 南中道の日頃の行動、言動から察すると部内の人間で、しかも新入りの女子生徒ではない。
 尋之か仁志か…
 でもこれはプライベートなことなので自分の口から女子生徒に言い出すことはできないのだ。
「真人がさぁ、急用で休むってさ」
 尋之はいきなり入って来て告げた言葉はわざわざセカンドネームで呼んだ南中道のことだった。
「えーっ、南中道くん来ないの?」
「なんで南中道くんのこと名前で呼ぶのよっ」
「喜多邑くん彼女いるの?」
「先生私のも占ってぇ」
 一気に女生徒たちが群がり話し始めた。
「真人は親戚の家に行くって言ってた。で名前で呼びたいから呼んでるだけ、彼女はいないけど彼氏がいる、ここは占い同好会じゃない、以上。じゃあ部長に代わって今日の活動に関して…」
 一瞬静まった室内が又騒がしくなった。
「か、彼氏?」
「喜多邑くんってホモだったの?」
「相手は誰なのよっ」
 食って掛からんばかりの勢いだが尋之は一向に動じない。
「お前らはいちいち部活動に行って『あなたの彼氏は誰?』って聞くのか?相手に失礼だろ?なぁ、先生?」
 突然自分に振られたので飛び上がるほど仁志は驚いた。喜多邑の顔が正視出来ない。
『いや…だ…』
 言いながら身体を尋之に預けて、内側の刺激を貪った。尋之の背に腕を回してしがみついた。
『も…』
 危なくもっと…と言いそうになった。
 しかし自分が身を委ねたいのはこの身体ではない、そしてこの愉悦を既に身体に刻み込んでいる事実に再び気付かされる。
「どうしたんですか、先生…」
 仁志は女生徒の声で我に返った。
 ―いけない、今は部活の最中だった―
「いや、何でもないよ。南中道くんは暫く来られないのかな?」
 女生徒達がざわめく。
「じゃあ、皆に好きな人が誰に好意を抱いているかが分かる心理行動を教えてあげよう」
 尋之の唇が何かを言いたげに動いたが諦めたようだ。
 女生徒が仁志を囲んでワイワイと始めた。
 それを尋之は傍観していた。