第十六話  そばにいて欲しい
「色々考えたんだ」
 南中道は尋之に呼び出されて放課後の部室にいた。
「南中道は、先生ともオレとも付き合うつもりなんだよな?だけどさ…オレには無理だ。」
終始うつむいたまま話す尋之の頭頂部だけが南中道の目に映った。
「顔。見せて」
しかし顔を上げることはない。
 仕方がないので左手を顎にかけ、強引に前を向かせた。
「一回だけ、聞く。僕のことをどう思っているの?」
 尋之は目を閉じた。
「南中道なんか…嫌いだ」
「わかった」
 南中道は尋之の唇に自分の唇を重ねた。
「僕は、尋之が好きだよ?先生が僕を相手にするわけはないんだ。」
 尋之は南中道の背中に両腕を回した。
「言ったら、オレだけの真人になるのか?もう先生を追わないのか?」
 南中道は十分に時間をとって答えた。
「よく、解らなくなったんだ、先生のこと。恋人との約束の日までは多分誰が相手でも駄目だと思う。それに、僕は今尋之の方が気になるんだ」



 南中道が高校を卒業する年が芳との約束の年。
 それまでは他に目を向けずに教師の仕事をもう少し頑張ろう、仁志は誓った。
 くよくよしているから南中道にまで心配させるんだ。
「んっ…」
「東埜さんならわかる、なんでヒデの男に落ちるかな…」
「あん…っ」
 仁志は尋胤の下で足を広げ男を受け入れていた。
「オレとは身体だけの関係なんて寂しいなぁ」

 あの子が卒業するまでにボロボロになってしまえばいい、そんなことを考えていた。