第二十四話  そして…
「ダメ…だって…ん…」
 毎晩、尋胤は仁志の部屋へ来ては仁志を抱いて朝帰る。
 仁志は東埜のことで悩む暇がない。
 それが尋胤の来訪理由だろうが毎晩では体力がついていかない。
「なぁ、東埜さんと寝てもなんだかしっくりしなかっただろう?」
 1ヶ月程した時、突然組み敷かれた状態で囁かれた。
「覚えて…ない…っ」
 尋胤が言う通りに東埜とのセックスがなんだか物足りなく思われたのは尋胤が押し掛けてきた最初の夜だった。
「お前の身体がオレ仕様になってるってことだ。」
「じゃあかなりガバガバだな…んっ…」
 女みたいにアンアン声を出すのは変だろうと常々思っている仁志だが、尋胤との情事は抑えがきかなくなる。
「あっあっ…」
「んっ、いいね、その声。かなり腰にくる。」
 まさかーー仁志には信じられない。
「淫乱教師…アダルトビデオのタイトルみたいだーー」
 仁志はちらっと考えた。
 もしかしたらーーその先は下半身の痺れでかき消された。


「元気になった」
 南中道は仁志の姿を見付けて呟いた。
「部活、再開できるかな」
 嬉しそうに笑ったのは仁志が元気になったからか、部活が再開できるからか−
「尋之のお兄さんが毎日通っていたしね」
 尋之は心臓が跳ねた。
「知っていたのか…」
「うん。安心したよ。実はさ、先生には悪いけど東埜さんより尋胤さんの方がお似合いだと思ってたんだ」
 尋之は唇を噛んだ。
「これで僕も前に進める。なぁ尋之、大学、一緒にしないか?−その…尋胤さんみたいに通わなくていいからさ…」
 尋之はただポカンと口を開いたまま呆然と南中道を見詰めた。
「先生のこと、恋愛感情で好きなんだって自覚はなかった。僕を本気にさせたのは君だからさ。先生は…尊敬してるけど人間として興味があったんだ。行動とか言動とか面白いからね。それを尋之が勘違いして強姦なんかするから、守ってやりたいと思ったんだ。…だからさ、終わりにしよう、」
 今度は落胆した。
「終わりってなーー」
「君が欲しい」
 尋之の抗議を遮り耳元に囁いた。
「ガマンの限界だ…僕をこんな身体にした責任をとる義務が君にはある!」
 最後は命令だった。
「うん」
 今にも泣きだしそうな声が返ってきた。
 これじゃ、喜多邑家は断絶だ…そんなことを考えながらー