| 南中道が蟻の研究を始めたのは小学校四年の夏休みの宿題で出た自由研究からだ。 謎が深まり過ぎて抜け出せなくなったときに仁志と出会った。
 「だから運命とか感じたんだと思います」
 決定的な一言を投げつけられ、意気消沈するしかなかった。
 「蟻の飼育ケース、先生にならって作成したんですけど先日全滅してしまいました。」
 「恋愛にばかりかまけているからだ」
 仁志はいけないと思いつつ、冷たい口調になる自分を押さえられなかった。
 結局尋胤に頼り、毎晩身体を繋ぐことで相次いで身に降った失恋を忘れていくしかなかった。
 「未成年者の性交渉は禁止されているんでしょうか?」
 「法律では禁止されてはいないと思う、だけど学校の風紀としてはダメだろう?」
 「生徒手帳には不純異性交遊は禁止とありますが同性とは書いてないです」
 南中道がこんな反論をしてくるなんて信じられなかった。
 「じゃあ…ありなんじゃないか?」
 もう自棄になっていた。
 「…先生の行動も正当化されますからね」
 皮肉には皮肉で返してくるということか…仁志は部活動が苦痛になった。
 「先輩、人間の行動についてなんですけど。」
 更にマイペースな南城が南中道に質問しにきた。
 「質問は先生にしたほうが確実だよ」
 にっこり笑って答える。
 「人間の行動は難しいからな…」
 仁志は真剣にそう答えた。本当に人間の行動なんてわからない。
 今、仁志が信じているものなんて何もない、尋胤の優しさ以外、何も残っていない…。
 「先生には兄貴がいるじゃないか、なんでそんなに切ない目で南中道を見るんだよ」
 気付いたら南中道を追いかけていて、尋之に咎められる。
 「そっか、悪かったな」
 自覚しないまま、南中道と接していければ良かった。そうなると全ての原因を尋之にきせてしまう仁志であった…。
 蟻のように一つの目標のためにだけ生きられたらどんなに楽だっただろうとふと思ってしまう。
 尋胤に全て委ねてしまおう、何も、考えないでいよう…と考えていた。
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