第三十三話  南中道くんの独り言
 何を失敗したのだろうか?
 先生は尋之に僕が好きだと言ったらしい。
 自信がないんだ。
 尋之の家で会った尋胤さんは、大人だし、カッコいいし、ちゃんと社会人として仕事しているし、何よりも先生を凄く想っていることだ。
 僕は尋之に責任をとるなんて言ったけど今でも逃げたいと思っている。尋之のことは好きだけど、自信がない。
 尋之は先生とセックスしたら、答えが出るなんて言うけど嘘だ。更に追いつめられてしまうのは目に見えている。
 東埜さんのこと、先生に言わなければ良かったのだろうか?でも、それではあまりにも先生が可哀想だった。東埜さんだって言って欲しいから僕に話したんだ。
 先生は僕のことを買い被っている、そんなに大人じゃない。だから、先生に惹かれた。
 僕は先生に、兄のような存在でいて欲しいと願っているんだ。


 真人は気付いていない。
 カズくんのことばかり考えて僕を抱く。僕の直腸に熱い迸りを放ちながら、カズくんを求めている。
 真人には恋がどういうものか分かっていない節がある。
 男が男を恋い慕うなんて多分信じられないのだろう。
 僕は、一瞬でも夢を見たから諦められる。
 今ならカズくんに返してあげられる…。
 だけど…つい顔を見るとあと少し一緒にいたら自分を見てくれるかもしれないと期待する。
 あり得ないのに…。
「尋之?どうかした?」
「え?」
「なんか言いたそうだったから」
「いや」
「ふーん…なぁ、前に僕さぁ、尋之に責任をとるって言ったけど…ごめん、やっぱり無理だ、僕は誰かを守れるような人間じゃない…守って欲しいって、尋之に守って欲しいって思っているんだけど。」
 部室の戸締りをしながらの告白。
「ちょっ…ちょちょちょ、ちょっと待って下さいっ!!」
 割って入ったのは南城だった。
「あの…南中道先輩の恋人って…喜多邑先輩、だったんですか?」
「それがどうした?」
 僕は表情一つ変えずに返事をした。
「じゃあ、先生…仁志先生はフリーなんですね?良かったぁ。」
 …ちょっと、ちょっとちょっと…