第三十六話  確信犯
「…いいよ」
 南中道は目元をうっすらとピンクに染めて答えた。
「じゃ、じゃあ、放課後、部室で!」
 どもりながらもそれだけ言うと尋之は足早に去って行った。
「やっと…だな」
 南中道が小さく呟いた。


「ちょっ…待てっ…てばっ」
 今日も占いの副業は繁盛した。南中道たちが卒業した後は確実に占い研究会になっていると思われる。
 仮入部から正式部員になった女子二名と、南城には、後片付けはするからと早々に部室から追い出した。
 南中道は自分から尋之の胸に顔を埋めると、「痛くても平気だから」と耳に直接囁いた。
 ゆっくり丁寧に解し、受け入れ態勢を整える。
「ふっ…んんっ」
 タオルで口を塞ぎ両手で押さえているが喘ぎ声が漏れる。
「真人っ」
 強く抱き締め、身体を繋いだ…


「大丈夫か?」
 南中道は身体をガタガタと震わせ、目に涙をためていた。
「すご…かった…」
 尋之は再び南中道の身体を抱き締めた。
「痛かっ…」
「すご…良かった」
 尋之は南中道の顔を見つめた。
「やっぱり、僕は尋之に抱かれたかったんだ、わかって良かった。」
「真人」
 瞳を潤ませて、尋之は三度南中道の身体を抱き締めた。


「ドア、開けたらいいじゃないですか?現行犯で捕まえられます。」
 二人の情事を見つけてしまった仁志の背後で南城が悪魔の囁き。
「それとも、羨ましい?先生が南中道先輩のこと好きなのは直ぐにわかりましたから。先輩が、欲しい?」
 唇から血が流れるほど強く噛んでいた。
「放っ…ておいてくれ…」
 それでも最後までその場所から立ち去れないでいた。
「先生のセックスの相手くらいならしてあげますよ?」
「いらない…もう、帰りなさい」
 南城は仁志を背後から抱き締めた。
「二人に、見せてやりましょう」
 そう言うとドアを開け、中に連れ込んだ。
「待…てっ」
 仁志は二人から目を逸らした。
「あぁ、カズくん、見てくれた?真人がオレの下で乱れる様…」
「辞める!こんなクラブ活動は中止だ!」
「先生、それは無理です、廃部には一ヶ月前に申し出て活動記録を提出しなければなりません。うちは廃部になる要素がありません。部員は南城が集めています、なあ?そうだろう?」
 仁志の腰に腕を回していた南城が慌てて離れる。
「南城は真人のファンだったんだろ?カズくんにちょっかい出すのは真人に構って欲しいからなんだってな?」
「なっ」
「有力な情報筋なんだ…わかるだろ?」
 南城が俯く。
「そういうわけだから、真人を好きな奴らは正々堂々と闘えよ、な?」
 コツン
 南中道が尋之の背中に頭を預けた。
「確信犯め…」