第三十九話  確認
「お兄さんが?」
 ついに直談判かー南中道は心の中でため息をついた。
 別にいじめているわけではない、自分より尋胤の方が仁志には必要だと思ったからそれを望んだ。
 南中道には尋之が必要だと思ったのと同じだ。
「わかった、いつ、伺ったらいいのかな?」
「今日は一日部屋にいるそうだ。」
 なんかー急いでいる?

「お兄さんも尋之もよく似ているんですね、同じことを言う」
「ヒデが?」
 尋胤に言ったことを南中道に尋之が伝えているとは思わなかった。
「二人ともヘンです、恋敵は少ない方がいいのに」
「そりゃ、そうだ。だけどさ、君だって和隆の幸せを祈るだろ?俺もあいつが一番幸せになれる方法を考えるんだ。俺に抱かれても幸せそうじゃない、あんな和隆を見るのは切ない。」
 南中道は初めて実感を伴って嫉妬心を覚えた。尋胤に…分かっていたのに言われると心臓が痛い。
 自分は尋之を選んだ、必死で言い聞かせた。
「君は…尋之も和隆も愛してる…違うか?」
「そんな…そんな器用じゃないです…」
「不器用だから何人にも好意を抱くんだろ?そして欲張りだからどれも諦められない。始末におえないのはみんなに好かれることだ、腹が立つ…だけど確かに君に惹かれる気持ちも分かるんだ。少年特有の危険さ…という奴だな。俺も十代のときに和隆に会えれば良かった…」
 南中道は一歩、前に進み出た。
「僕は、確かに先生が好きです。だけど、先生に本当に必要なのはお兄さんだと思っているんです。」
「だったら…」
 尋胤には、賭けだった。
「一度尋之と別れて、和隆を受け入れてやって欲しい。」