第四十話  監禁
「嫌だ。絶対嫌だ!」
 尋之がいくら反対しても尋胤は今回ばかりは譲らなかった。


「尋胤の仕業だ。」
 仁志は別段なんの変わりもなくそう呟いた。
 今、仁志と南中道は仁志の部屋に閉じ込められている。ドアが全く開かなくなってしまったのだ。窓から抜けるのは無理だった。だとしたら尋胤が諦めるのを待つしかなかった。
「先生、蟻も恋をするんでしょうか?その場合同性愛ということになりますよね?」
「働き蟻同士だったらな。でも基本的には女王蟻が相手じゃないか?」
「必ずしも誰もが同じとは限らないじゃないですか。」
「南中道、」
「見られちゃいましたからね」
「何も変わらない。」
「そう、信じたかった…だけど…」
 南中道は仁志の頭を抱き寄せた。
「先生…抱きたい。悔しいんです!尋胤さんに言われて、嫉妬して…好きです。」
 南中道はずっと抱えてきた物を吐き出した。
「同性愛者というだけでも後ろ指指されそうなのに、二人の人間を愛した。卑怯者なんです!」
 仁志は南中道の唇に自分の唇を押し当てた。
「ずっと好きだって言っていたじゃないか…尋之から君を奪ったりしない…そういう関係があってもいいだろ?」
 南中道は仁志を抱きしめたことで頭が真っ白になり、仁志の言うことが理解出来ないでいた。兎に角、今は仁志とセックスしたい…それで頭がいっぱいだった。
「芳がいなくなって、就職して、平凡な時間を過ごしていたのに。思い出させたのは、…真人…だからな。」
 少し声がかすれた。
「先生…」