| 「なぁ、兄貴、真人の言い分って当たっているけど考えてみたらカズ君が好きだって言われただけだよな。」 尋胤は尋之を睨み付ける。
 「気付いていなかったのか?」
 「…やっぱりそうか…」
 尋之は自分の考えに確信が欲しかっただけで確定的な答えが欲しかったわけではない。
 「真人、カズ君とセックスしたかな…」
 「する…って言ったじゃないか。」
 「やだな…真人はオレの物なのに…」
 「和隆は女だ、南中道くんが我慢できるのか?」
 「真人はどっちもだから。」
 「でも女の適性能力が高いんだろ?」
 「オレん時はね」
 寂しげに答える。
 「もともと真人はリーダー資質が高いから。年下でもカズ君をリードするよ、きっと。」
 「南中道くんが和隆と付き合ったら諦めるのか?」
 「やだな。二人が同棲し始めたら居座ってやる。」
 尋胤が笑いだした。
 「ヒデならやりかねない。」
 「諦めようかって思った、何度も真人にも別れようって言った、だけどうんと言わないんだよな、あいつ。何でだろう…」
 尋胤は困ったような顔で尋之を見ていた。
 「何だよ?」
 「南中道くんだけどさ…」
 尋胤が尋之に話したことは南中道の家庭の事情。
 「南中道くんの母方の祖父がうちの会社の会長だって話したよな?東埜さんの会社の経営者は父方の祖父だったんだ。だから絶妙なタイミングで東埜さんが帰国していた。」
 「だって外資系じゃなかったけ?」
 「日本人が外資系企業の経営をしていけないということはないからな。」
 「まあ、そうだけど。」
 「父親はインテリアデザイン関係の会社をやってるらしい。母親はエステの会社。そして全ての後継者に該当するのは…南中道くんなんだ。父親も母親も南中道くんもひとりっ子…ってやつだな。でも彼は研究者になりたい。全てを解決するには自分が最高責任者という肩書きだけ背負って信頼する人物に任せる…その人事に俺達は絡んでいるのではないかと、推測した。」
 尋之はため息をついた。
 「真人がそんなこと考えられるだろうか?」
 「考えなければならない立場にいる。」
 「カズ君が、ちゃんと兄貴みたいに研究職に就いてくれてればなぁ…」
 もう一度、大きなため息をついた。
 「黙って指をくわえて見ているつもりか?」
 「まさか」
 「まだ勝ち目はありそうだ」
 
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