第五十三話  二学期
 学校行事が立て込んでいる二学期。生徒たちは忙しい。
 特に二年生は全ての行事をこなさなければならないのでてんてこまいだ。
 例に漏れず、南中道と尋之も文化祭の準備やら体育祭の準備やらで忙殺されていた。
「南城くん!」
 一年生の教室に顔を出した南中道は女生徒たちの視線の集中砲火を浴びていた。
「今日の放課後、機材の手配をして欲しいんだ。尋之の兄貴の会社に頼んであるから借りてきてくれ、地図はこれ。」
 南中道の母方の祖父に手を回してもらった。
「その後、尋之の兄貴と一緒にマンションに行ってくれればいい。」
と、耳打ちされ、南城は動揺した。
 尋之に犯されてから、尋之のことが頭から離れない。
「分かりました」


「南中道先輩はいないんですね…」
 受け取った機材を手に、尋胤と二人で帰路についた。尋胤のマンションに辿り着いくと待っていたのは尋之だけだった。
「南中道は気付いてた。」
 そう言うと尋之は尋胤の前で南城を犯した。
「南城くんは受けなんだな。」
 受け…それはなんだろうとぼんやりした頭で考えた。自分はどうしてここにいるのか、考えることも出来ないでいた。
「南城くん、なんで黙ってやられてるんだ?」
「なんで?だって南中道先輩が…」
「南中道くんが言ったらなんでもするの?」
「いえ、全部じゃ…喜多邑先輩とは成り行きだったし…お兄さんは、仁志先生と付き合っているんですか?」
 いきなり話題が転換された上に自分に話を振られたものだから尋胤は素直に答えてしまった。
「なんで?」
「淋しそうな目が南中道先輩と同じだから。仁志先生は好きな人を忘れるために違う人を好きな振りをしているんだそうですね。」
「あ」
 尋胤と尋之が同時に声を上げた。
「東埜さんに、似ている」
「え?」
「南城くんが和隆の恋人、東埜芳に似ているんだ。話をしているときの横顔はそっくりだ。」
「先生の恋人って女の人なんですか?」
 南城が的外れな質問をしたので二人とも南中道が何も話していないことを悟った。
「東埜芳…の線はまだ捨てきれないのか…」
 尋胤は小さく独りごちた。