第五十四話  話し合い
「君は誰にでも脚を開くのか?」
 南城は喘ぎながら首を左右に振った。
「じゃあなんで、俺とセックスしている?」
「尋之…先輩…のっ!ああっ」
 南城は更に深く穿たれる。
「あっ…あっ…」
「あんあん言っているだけじゃ分からない…そんなに気持ち良いのか?」
 南城はガクガクと頷く。
「挿れられるのが好きなのか?」
 何度も繰り返し質問され、答えるのが鬱陶しくなった南城は無視してセックスに集中しようとした。すると答えを得られなかった不満から動きをびたりと止めた。
「一人だけ気持ち良くなろうなんて虫の良い考えは捨てろ。お前はただの精処理の為にあてがわれた人形みたいなもんだからな。…お前も俺も今夜の話し合いからは弾き出された。」
「話し…合い?」
「知らないのか?」
 南城は頷いた。


 仁志、東埜、南中道、尋之。四人が仁志のマンションの一室に集合した。
「先生、答えが出たでしょ?」
 南中道は俯いたまま、言葉を発した。
「ああ。夕べ一晩中考えた。」
 一度、言葉を切った仁志は大きく息を吸い込んで深呼吸をした。それから全員の顔を見るとはっきりと言った。
「ここに来てもらった三人には悪いけど、僕は君たちが卒業するまでは教師という立場を守ることにしたよ。…どうかしていたんだ。なんであんなに色欲に溺れたのだろう…。そして芳、二人の卒業まで答えは待って欲しい。あなたとのことは身体だけの関係とは思いたくない。」
 東埜はため息をついた。
「結局和隆は待てとしか言わないんだな。」
「ごめん、だけど、今はやはり誰を愛しているのかわからない。一度無に返して一から見つめ直したいんだ。」
 尋之が初めて言葉を発した。
「どうして兄はここに呼ばれなかったのですか?」
「それは…ちゃんと尋胤には個人的に…」
「また、肉体関係だけ、要求するのですか?それじゃ何も変わらない。」
「違う!尋胤には…さよならを…伝える。」
 尋之が息を飲んだ。
「捨てる?」
 無言で頭を左右に振った。
「でも一度身体の関係を持ったら友人になんか戻れないです。兄は、それでもいいというでしょう、だけど死ぬほど辛い気持ちを抱えているんです…。どうして…。」
 尋之は分かっていることをそれでも言葉にしないではいられなかった。
「わかりました。東埜さんは東京本社に異動ですからいつでもお会い頂けます。僕は一生徒として、部活動の顧問教師に接します。尋之、先生を強姦しないように、いいな?」
「分かってる」
 不承不承頷いた。
「では、僕たちは失礼します」
 南中道と尋之は去って行った。
「結婚を前提に付き合ってくれないか?」
 いきなり、東埜が仁志の目を見て言った。
「だから、」
「分かってる。そのためにプロポーズしたんだ。今度はちゃんと俺を見て欲しい。身体の関係なしで。」
 仁志には答えることができない。



「も…無理…いき…できない…」
 南城はうつ伏せに枕を抱えて腰を突き出す格好で尋胤にまだ犯されていた。
「こっちだって腰痛いんだぞ…止めればいいっていう選択はなしだ」
「なん…で?」
「身体の相性がいいからな」