第五十六話  皆目見当がつかない
「…ということで、行動心理研究会は占い活動を全て廃止して本来の研究活動に専念します。しかし、自分は占いを専門に研究しよう、というのであればかまいません。」
 南中道が躊躇いもなく幽霊部員達を前にして宣言した。
「先輩!」
 突然、女子部員から手が上がった。
「何か?」
「研究に従事したら先輩は毎回は来ないのですか?」
「いや、僕は部長だから毎日来ます。」
「なら、私も毎日来ます」
 南中道は苦笑した。
「いや、文化部ですから活動は週三回でいいんですが…」
「でも演劇部もブラスバンド部も毎日活動しています。」
「あそこはどちらも実績があるから。」
 なおも女子部員は食い下がる。
「うちも、実績を作りましょう。」
 南中道は明らかにイライラしている様子だ。
「そういうセリフは幽霊部員に言う資格はありません。今日集まってもらったのは、活動しないなら辞めて貰おうと…」
 南中道は書類を取り出した。
「一応退部届けが必要です。辞めようと言う人は提出して下さい。残る人は必ず週三回出席してください。」
 南中道は退部届けを手に暫く黙って待っていた。
「あの…」
 先程とは別の女生徒が手を挙げた。
「一度部に昇格したら同好会に降格はしないんですか?」
 南中道は満面の笑みで答えた。
「はい」


「誰も?」
「はい」
「占い止めるのに?」
「はい」
 仁志もいぶかった。


 翌日は部活動の日。
 部室に辿り着いた南中道は驚愕した。
 部室が女生徒で埋め尽くされていたからだ。
 ふと、南中道は思った。自分は女生徒に人気があるらしい…ということ、この中から誰か一人を選んで「妻」と言う地位を与えたら、黙って自分の恋を見逃してくれるのではないかと。