| 「あ…んんっ」 週三回、南城は尋胤のマンションに通い、身体を繋ぐ。
 「お前の顔は嫌いだ。」
 尋胤が悪態をつく。
 「はぁ…ん」
 「女みたいな声をだすな!」
 南中道にも尋之にも感じなかった感情が湧き上がっていた。
 「尋胤…さん…もっ…と…」
 「もっと?なんだ?」
 「深…く…あっ」
 体内に深々と突き刺さる物を自分の目で確かめようと顔を上げる。
 「入っ…てる…尋胤さんの…入ってる」
 南城が歓喜に打ちひしがれ、仰け反った。
 
 
 「南城、もう尋胤さん宅には行くな。」
 南中道が非情な言葉を投げつけた。
 「…ぁぇぅ…」
 あまりにも声が小さくて母音しか聞き取れなかった。
 「なんだ?」
 「いやです…もう…南中道先輩の言いなりにはなりません!」
 「ミイラとりか?」
 「ミイラでもスフィンクスでも構いません!自分の意志で僕は尋胤さんのマンションに行きます。」
 くるりと踵を返すと廊下を早足で去って行った。
 「…義理の兄になるのかな?尋之の。」
 小さく呟きながら微笑んだ。
 
 「ぅぃぇぅ…」
 南城が尋胤に何か言っているのだが、尋胤には届かなかった。
 「二日続けてくるなんて好き物だな。」
 冷酷に告げた。
 「俺は別にどうでもいいんだ。…あいつが東埜さんとヨリを戻すんでなければお前で憂さを晴らす必要はないんだからな。」
 「憂さ晴らし?」
 尋胤が意外にも申し訳なさそうに頭を掻いた。
 「悪かった。」
 すると突然、南城は尋胤にすがりつき、「今まで通り、身体だけの関係でいいです。…捨てないで…。」と、叫んだ。
 「…年末だから仕事が忙しいんだ。休み以外は無理だな。」
 「それでいいです!…好きです。」
 互いに見つめ合ったまま、沈黙が落ちた。
 「ありがたいが…無理だ。和隆に、未練がある。」
 それでも南城は尋胤の身体に回した腕を解く気はなかった。
 「何でもいいです!そばにいたいんです。身体なんてどうなってもいいし、全くセックスが無くても何でもいいんです!」
 南城がどれくらい尋胤に本気になっているか最初に気づいたのは南中道だった。
 
 「南城でいいんですか?」
 南中道は尋胤に聞いた。
 「あいつは真面目だから、一途に追いかけます、きっと。」
 南中道は気づいていた、南城が南中道に本気でなかったこと。ただの好奇心だったこと。
 「僕が、そうだったから。」
 「南中道くんも、真面目なんだ…」
 
 「尋胤さん?」
 尋胤は名を呼ばれて我に返った。
 「なぁ、一つ頼みがある。クリアしたら…お前のこと考えてやる。」
 南城の瞳が輝いた。
 「和隆の…いつでもいい、丸一日を追ってくれ。」
 和隆…尋胤にとって南城はただの駒にすぎないんだと、しかしそれでも恋うることを止められない自分に腹を立てた南城だった。
 
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