「ん…」
押し殺すような甘い響きを持った声が化学実験室の奥にある準備室から洩れている。
「せん…せ…」
仁志が去った後、化学の担当として赴任してきたのは新卒の男性教師だった。
当然、南中道は心理研究会の顧問を頼み…断られた。
「蟻の研究に興味ないんだな。」
と言うわりには南中道を頭の先から爪先まで観察していた。
南中道はかまを掛けてみた。そして引っかかった。
「真人!」
尋之が血相を変えて飛んできた。
「おまえ、新任の教師と…したのか?」
「いや?」
しかし表情は明るい。
「僕には持ち駒がある。尋之の兄さんには悪いけど。」
「な…南城を?」
無言で頷いた。
「せんせ…もう…苦しい…」
実験台の上に仰向けに寝かされて下半身だけを露わにして淫らな行為を受け入れている南城は、言葉とは裏腹にうっとりと瞳を細めていた。
「この部はこんなことばかりしているのか?」
「ん…あ、いいえ…」
南城は思考の停止しかかった頭で考える。
いや、うちの部はみんなセックスばかりしている。
とくに南中道と喜多邑は。
あの二人…何を考えているのだろう?
この先生、早く終わらないかな…尋胤が帰ってくる。
早く尋胤と抱き合いたい。
一方、仁志との再会を夢見る?高校三年に進級した南中道は。
「あ、尋之っ…そこ、気持ちいいっ」
相変わらず、尋之とセックスに耽っていた。
仁志は?
今、何を…。
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