「なんで先生が真人の代わりにうちの仕事をやるんですか?意味がわかりません。」
仁志は尤もだと思った。
「それは…南中道くんの優秀な頭脳を簡単に埋もれさせては世界中の人々に対しての背徳行為だと思うからです。僕みたいな非凡な人間に南中道くんの代わりは到底難しいと思われるのは承知の上です、どうか南中道くんの将来を締め付けないであげて欲しいのです。」
南中道の祖父は仁志を黙ってじっと見つめた。
「真人が先生にお願いしたのでしょうか?」
母親が心配そうに問う。
「いえ、私から申し出ました。」
「…真人は、君にはやらん。」
「お義父さん!」
「知ってるぞ、真人はホモなんだ」
「え?」
「な、」
両親が驚いて言葉を失った。
「同級生と偽って男を連れ込んではベッドに誘い込む淫らなヤツだ」
ふんと、鼻で笑った。
「そんなヤツ、私の跡継ぎにはいらん!」
吐き捨てるように言うと部屋を後にした。
「まさか…」
まだ母親は右往左往している。
「私には渡さない、仕事も継がせないということは真人君は自由にしろということと解釈できますね?」
南中道の父親は少し首を傾げて言葉を繋いだ。
「うちの家族はみんな嗜好が違うんです。だから誰も同じ仕事が出来ない。私も父の仕事を手伝ったことはあるのですがご覧の通りです。そして、真人が同じだという事に気付いたのは最近です。私たちの仕事は他人に譲ることは可能です。父の会社は私の従兄弟が継いでくれます。真人は好きな道を歩けと、伝えてあります。」
仁志は耳を疑った。
伝えてあります?
何だって?
じゃあ、僕は何をしに来たんだ?
「南中道くんは、家業を継がなければならないと…」
父親が大きくため息をついた。
「最近、家ではやらなくなったから安心していたのですが、そうですか…外でやっていたのですね…」
仁志には何のことかわからない。
「虚言癖があるんです。そしてそれを本当にしないと気が済まないんです」
虚言癖…
やられた…
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