| ある日突然、つないだ手を放さなければならなくなったらどうしよう…。 仁志はついに痺れを切らした。自分から南中道に連絡を入れたのだ。
 
 会いたい
 
 南中道は喜び勇んでやってきた。
 「先…和隆、さん」
 名前の呼び方はぎこちなくて、まるで出会ったばかりの頃のようだ。
 「なんで、会いに来てくれないんだ?」
 「迷惑かなと。」
 「迷惑かどうかは行動を起こしてから考えろ!」
 文句を言いながら抱きしめる。
 「会いたかった」
 ゆっくり、再会を噛みしめる。
 唇を重ね、徐々に触れ合う場所を増やす。
 「ごめん、南中道にばっかり辛い思いをさせていたよな。」
 仁志の腕の中でただ否定のために首を左右に振る。
 「尋之が東埜さんに…」
 ああ、そうかと気付く。
 東埜の言っていたことはそういうことだっったのだと。
 「みな…真人。僕と尋之とどっちを選んだんだ?」
 「せんせ…和隆さんです。」
 「じゃあ、」と言って唇を重ねる。
 「尋之のことは僕に任せておけばいい。」
 安心した笑顔で応える。
 仁志はやっと自分が求めていた南中道がどの南中道だったか理解した。
 逃げる南中道を追いかけたのは、瞳がそれを求めていたからだ。
 追いかけて、追い詰めて、がんじがらめにして支配して欲しい。それが南中道の想い。
 南中道は気付いた。仁志を求めた本当の理由。
 その腕の中でゆっくりたゆたっていたいと。
 
 初めて二人は本当に心からのつながりを見つけた気がした。
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