仁志は考えた。
南中道が夏休みの間はなにもかも放り出して愛を育むことだけに専念してしまったが、仕事をしなければいけない。いや、南中道を養う云々ではなく、研究がしたい。
しかし、職業として研究などさせてくれるところがあるのだろうか?
インターネットを駆使して調べていたら、仁志の為に用意されたような職場があった。
そこは食品会社で、社会経験があり、大学で生物学を専攻していた人を探していた。しかも専用の設備が整っている。
食品の開発に必要なのだろうか?
合間に好きな研究もできるだろうか。
南中道に尊敬される人間になりたい。ただ好きだという感情に流されるのではなく、目標とされる人間になりたい。
初めて守りたいと思った人間だから。
東埜には着いて行けば良かった。気が楽だった。それが敗因だ。
愛され続けるよう努力をしようと決めた。
仁志は履歴書を書き始めた。
もっと早くこうすれば良かった、父親のいうことなんか真面目に受け取らなければ良かった。
結局は仁志の人生、他者は家族と言えども介入できないのだ。
焦ってばかりいても仕方ない。兎に角歩き出さなくては。
南中道との未来のための履歴書。
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