自分の生まれ育った家の前だというのに何を緊張しているのか?
決意をしてドアに手を掛ける。
「ただいま」
で、いいのかわからないが。
母親と妹は機嫌良く迎えてくれた。しかし父親は顔も見せずに帰れと怒鳴る。
「許しを乞うのではありません、報告にきました。お父さんの望む道は歩けません、夢を追います。二度も裏切ることになり申し訳ありません。」
言いたいことだけ伝えて立ち去る。
母と妹は待てと止めるが父は「二度と敷居を跨ぐな、勘当だ!」と叫んだ。
父の怒りは尤もだ。今まで自分の言いなりになると信じていた息子が突然反抗期を迎えたのだから。しかも男の恋人を伴侶にすると言われて納得は出来ないだろう。
ふと、気付く。
真人の家族に会いに行っていない。
仁志は家路を急いだ。
帰り道妹から携帯電話にメールが届いた。
南中道先輩と一緒にいるという噂が学校に広まってるけど事実が知りたい
仁志は心の中で詫びる。まだ伝えることが出来ないと。
再び携帯電話がメールの着信を告げる。
どちらにしても私はお兄ちゃんの味方だからね
妹の言葉に涙が出そうになった。
真人が卒業したらご両親と祖父に会いに行こうと決めた。
マンションに着いたら部屋に南中道がいた。仁志は喜んでいる自分が恥ずかしくなった。
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