東埜が尋之を南中道の目の前で抱いた翌朝。
「おはよう」
南中道は何事もなかったように朝の挨拶をしてきた。
「…あのさ、俺がどこの大学に行っても構わないのか?一緒に大学行こうって話したのはまだ五ヶ月前だぞ?」
その言葉に対し、南中道は特に変化をみせない。そして小首を傾げると
「尋之。悪いけど僕は先生を選んだ。君は東埜先生の手を取った。だから明白に道は違えた。構うとか構わないとかの次元じゃないよな?」
そう言うと平然として昇降口に消えた。
南中道の背中を見送っていると
「絡むなよ」
と、背後から抱きしめられた。
「ひっつくなよ」
尋之は東埜を振り払う。
「なんだよ、つれないな」
東埜は大人しく腕を解いた。
「当たり前だ、バーカ」
悪態をつきながらもどこか尋之は楽しげだ。
誰かを好きになることは苦しくなることではない。温かい気持ちになれることだ。
東埜に言われた言葉を、実感する。
尋之は南中道を嫉妬させたかった。それは幸せだから。
「南中道も和隆と上手くいってるんだろ?だからお前とのセックスを見ても何も感じないんだよ。」
そうかもしれないーと、納得した。
仁志は南中道を幸せにしてくれている。
仁志だけが南中道を幸せに出来ることは大分前に気付いていたが、今それを感じ取った。
「じゃあな」
東埜に手を振る。
「おぅっ。また放課後やろーな!」
恥ずかしげもなく堂々と言葉にする。
「バーカ!」
しかし尋之の足取りは軽いのだった。
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