第九十五話  嘘
 素肌に毛布を掛け、すやすやと寝息をたてているのは南中道。
 それをベッドに腰掛けて見つめているのは仁志。
「なあ、そろそろ本当のこと、教えてよ。」
 南中道に聞こえていないのが大前提の独り言。


 週末。
「お忙しい所お集まり頂きありがとうございます。」
 ホテルの会議室を貸し切り、南中道が集めたのは南中道の両親と祖父、仁志の両親と妹、喜多邑兄弟、東埜そして南城。
「私の、懺悔を聞いて下さい」
 南中道の告白が始まった。


「僕は祖父と両親の会社を全て自分のものにしたかったんです。そして…和隆先生も尋之くんも…南城くんも。」
「ほらみろ、尋之。南中道はお前らを囲って自分はふんぞり返る気でいたんだ。」
 東埜がみんなに聞こえるように毒づく。
「いえ。支配したかった。いずれ企業のトップに立つのなら采配の出来る人間になりたかったのです。だから三人で試すつもりでした。なのに大誤算です、まさか恋愛の対象にされるとは計算外だったんです。金をちらつかせれば着いてくるだろうと桃太郎の鬼退治みたいなことを考えていました。だけどそれぞれに思いがあり、それぞれに感情があるんです、計画は早い段階で頓挫しました。なので和隆先生一人に絞りました。」
 会場にいる全員が静まり返って聞いていた。
「だけどそれでもダメでした…僕は何も出来ない能なしなんです。」
 うなだれた南中道を、仁志はじっと、見つめていた。
「真人、この間の僕の独り言聞いただろ?また嘘を並べているって僕は知っている。」