「朝からやたらと歯磨きにこだわっているけど何?」
のんびりした性格の潤だが、電車に乗ってやっと遙の言動に気付いたらしい。
「んー、兄ちゃんがさ、二度歯磨きしてたからさ」
潤は納得した顔で大きく頷いた。
「湊さん、怖いもんね。」
遙は潤の言葉に首を傾げた。湊が怖い…とは違う、湊は遙に優しい。だけど外では無口なのだ。
「兄ちゃんは航が無愛想になった感じかな?」
「へー、意外だな。響と僕はいつも睨まれててビビってたよ。」
「それは目が一重だからだよ、あれで笑ってるつもりなんだ。」
「ふーん。でも遙と湊さんって顔が似てないよな。」
「で?何で歯磨き二回するのか聞けなかったんだ?」
遙と潤の会話を聞いていた航が最初の疑問を投げかけた。
「聞けなかったんじゃなくて後から疑問に感じたんだよね。」
電車は一つ目の駅に停まる。乗客が乗り降りして総数はあまり変わらない。
「じゃあ帰って聞けばいいよ」
「そーだなー」
遙は歯磨きの疑問を湊に聞くべく、一度封印した。
「湊さんって勉強教えてくれる?」
潤が唐突に遙へ質問を投げかけた。
「自分でちゃんとやった結果、分からなかったら教えてくれる。」
「ボクにも教えてくれるかな?」
「わかんない」
遙は返答しながら無理なのではないかと思った。
「意外なんだけど恥ずかしがり屋なんだ、兄ちゃん。」
「へー」
言ったのは航。
「遙の兄貴なのに意外だな」
二つ目の駅、下車駅に着いた。
三人は電車を降りながら話を続けた。
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