| 「遙ちゃん、おはよー」 「おはよー、浅倉。」
 遙、潤、航の三人で並んで入ってきたのにも関わらず、女の子はまず先に遙に声を掛ける。
 「潤くん、航くん、おはよー」
 「おはよう」
 二人はなんだかついでのようだな、と思いながらも名前で呼んでくれるのは遙効果だとちょっぴりだけ感謝している。
 「ねーねー、遥ちゃんのお兄さんって菊花高校に通ってるんだって?紹介して!」
 「だめ。兄ちゃんはうちの高校毛嫌いしているから相手にしてもらえないよ」
 浅倉と呼ばれた女生徒は特に嫌な顔はせずに「なら幼なじみとかって言ってた人でもいいよ」
 すると遥が明らかに嫌な顔をした。
 「あいつに女の子紹介したら絶対に自慢するからヤダ!」
 潤と航が背後で頷いた。「僕たちみんな幼なじみだからよく知っている、止めた方が良い。」
 すると女生徒があからさまに敵意の籠もった顔をした。
 「ケチっ」
 そう、捨てぜりふを残して去っていった。
 「なあ、僕なんか間違ってたか?」
 「いいや、なんも間違っていない、間違っているのは浅倉さんだよ、うん。」
 と、いいながらも納得していない様子だった。
 鞄を机の上に置くと三人は廊下へ出る。階段の踊り場にベンチが作り付けてありここで担任が現れるまで話し込むのだ。
 「湊さんってさっき国立大に受かったって言ってなかったっけ?」
 航が口火を切る。
 「うん。警察のエリートになりたいらしい。なんか変えたいことがあるんだってさ。」
 「道路交通法でも変えたいのかな?」
 「さあ?」
 三人はとことん呑気である。
 
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