菊花高校は県下一のエリート高校である。ここに進学したからには確実に国立大、悪くても六大学に進学しなければ近所を歩けないどころか卒業アルバムも欠席者扱いにされてしまうほどの屈辱だ。
湊は遥のようにみんなで仲良く通学〜というタイプではない。なので少し早いが電車の空いている時間を選んで出掛ける…のは、響に会いたくないのが本音だ。
「湊!なんで先行くんだ?」
「!」
湊は頭を抱えた。
「言っておくけど、君と僕は友達でもなんでもないし、大体僕は君より年長で先輩という立場だろう?呼び捨てはおかしいだろう?嫌悪してもいい存在だ!」
しかし響はしれっとして「なにぶつくさ言ってんだ?昨日の遥、超可愛かったな〜」と、のたまわった。
「だから!」
怒る気力もなくなった。
「君に遥を近づけるのも本来は遠慮したいところだが最悪にも君と遥は小、中学校と同級生でありムカつくことに九年間クラスメートというなんとも腹立たしい関係であることが運の尽きだ、仕方がないから朝の挨拶だけは許可したがそれ以上は絶対に許さない!」
長々と演説をした湊は息切れしながら響を振り返ると相変わらずのれんに腕押し、糠に釘。
「そうなんだよなー、湊がこの高校だからてっきり遥も同じだと思って受験したのになんであっちなんだ?」
すると俄然、張り切って湊は宣言した。
「決まっているだろう?君が嫌いだからだ!他の二人は同じ高校だろう?示し合わせたに決まっている。…僕と離れることはまあ、家が一緒だから構わなかったんだろうな…」
最後は力なく自分に言い聞かせていた。
「なあ湊、遥ってバカか?」
「バカ?あいつほど賢い奴はいない!バカは君の方だよ!」
朝からカッカし過ぎて湊はげっそり、疲れ果てていた。
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