| ホームルームが終わり、掃除が始まると当番の子以外は三々五々と散っていく。 「じゃっ」
 片手を挙げ、部活に行ったのは航。
 「じゃーなー」
 と、呑気に見送ったのは潤。
 「いーなー」
 と、呟いたのは掃除当番の遙。
 三者三様で。
 「なー遙、掃除終わったら遊びに行かね?」
 窓枠に頬杖をついて、女生徒に邪険に扱われながらも遙にまとわりつく。
 「いーけど、掃除手伝えよ」
 「そうはいかない」
 「遙ちゃん、真面目に掃除してよ!」
 また女生徒に怒られる。
 ぶーぶー言いながら、言われながらなんとか掃除を終わらせ帰路に着く。
 「池袋、行かねーか」
 「いーねー」
 二人は楽しげに並んで校門を…
 「…兄ちゃん…」
 「母さんに頼まれた。今日から勉強をみてやる。」
 つと、潤に視線を送る。
 「潤君も一緒に。」
 「ラッキー」
 潤は今朝言っていたことが早々に現実になったので喜んでいる。
 「兄ちゃん、そんなに張り切らなくても。」
 「卒業旅行の宿のランクが変わるからな」
 ただで動く湊ではない、当然報酬があるのだ。
 半ば湊に連行されて二人は校門を後にした。
 
 「湊!先に帰ったのに遅いじゃないか。さあ、席に着きたまえ、僕も一緒に勉強をみてやろう」
 多田家には響がソファにふんぞり返っていた。
 「お断り」
 「やだー」
 「帰れ!」
 …揃えたような否定的な言葉…。
 「仕方ないな。遙、行くぞ。」
 響は立ち上がり遙の腕を掴む。
 「行くな!」
 もの凄い早さで湊が遙の手を取る。
 「何処へ?」
 その間で遙は惚けていた。
 「湊!なんで貴様は人の恋路を邪魔するんだ?」
 「なんだよ!響、好きな娘がいるのかよ。ならそう言えよなー」
 その手の話題には反応が早い。
 「バカ、違うよ。僕は、」
 
 次回『家庭教師』につづく。
 
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