第八話  放課後  
 ホームルームが終わり、掃除が始まると当番の子以外は三々五々と散っていく。
「じゃっ」
 片手を挙げ、部活に行ったのは航。
「じゃーなー」
と、呑気に見送ったのは潤。
「いーなー」
と、呟いたのは掃除当番の遙。
 三者三様で。
「なー遙、掃除終わったら遊びに行かね?」
 窓枠に頬杖をついて、女生徒に邪険に扱われながらも遙にまとわりつく。
「いーけど、掃除手伝えよ」
「そうはいかない」
「遙ちゃん、真面目に掃除してよ!」
 また女生徒に怒られる。
 ぶーぶー言いながら、言われながらなんとか掃除を終わらせ帰路に着く。
「池袋、行かねーか」
「いーねー」
 二人は楽しげに並んで校門を…
「…兄ちゃん…」
「母さんに頼まれた。今日から勉強をみてやる。」
 つと、潤に視線を送る。
「潤君も一緒に。」
「ラッキー」
 潤は今朝言っていたことが早々に現実になったので喜んでいる。
「兄ちゃん、そんなに張り切らなくても。」
「卒業旅行の宿のランクが変わるからな」
 ただで動く湊ではない、当然報酬があるのだ。
 半ば湊に連行されて二人は校門を後にした。

「湊!先に帰ったのに遅いじゃないか。さあ、席に着きたまえ、僕も一緒に勉強をみてやろう」
 多田家には響がソファにふんぞり返っていた。
「お断り」
「やだー」
「帰れ!」
 …揃えたような否定的な言葉…。
「仕方ないな。遙、行くぞ。」
 響は立ち上がり遙の腕を掴む。
「行くな!」
 もの凄い早さで湊が遙の手を取る。
「何処へ?」
 その間で遙は惚けていた。
「湊!なんで貴様は人の恋路を邪魔するんだ?」
「なんだよ!響、好きな娘がいるのかよ。ならそう言えよなー」
 その手の話題には反応が早い。
「バカ、違うよ。僕は、」

 次回『家庭教師』につづく。