第二十二話  錯覚  
 もしかしたら…と、遥は思った。そしてそれは的中していた。
 航とのセックスは凄く気持ちよかった。だから好きなんだと思った。
 でも湊とのセックスも響とのセックスも気持ちよかった。
 それはつまり、遥は挿れられたら気持ち良くなる、ただそれだけのことだったのだ。
「響、さんきゅ」
 俯いたまま、遥は服を身に付けた。
「遥、解っただろ?ボクは遥が好き…」
「ごめん、僕はダメだ。身体の相性は良いけど、心がついて行かない。」
 そういうと、振り返ることもせず、遥は家路に着いた。



「淫乱…?俺が?」
 部屋に戻ると遥はパソコンを立ち上げ、検索サイトを駆使して調べ上げた結果は『淫乱』の二文字だった。
「だって俺、男だし…女のこと好きだし…でも航と付き合うって言った時点で既に違っている気がするし…だけど…」
 翌日、遥は再度検証してみることにした。
 その結果、緊急招集という事態になったのである。



 自室に湊、響、航、潤を呼び出した。
「色々考えてみて、実際に体験してみて分かったことがあるんだ…僕は…」
 いちど言葉を切り、大きく深呼吸をした。
「…だから…女の子とはセックスが出来ない身体だったんだ…で、…その…航、ごめんっ。付き合うって言ったのに兄ちゃんと響とセックスしたんだ。…それで分かったんだけど…僕は挿れられれば気持ちよくなって心は関係なく、気持ちよくなっちゃって、どうでもいいみたいなんだ…だから…誰が好きなのかわからないんだよっ。」
 言うと幼児のようにわーわーと泣き出してしまったのだった。