第二十四話    
 航が去った後、困惑した顔の遥を見て潤は心の中で小さくため息をついた。
「遥、今の、自分はすごくモテますって自慢しているだけだよな?いい気なもんだな…航が可哀想だ、ずっと遥のことだけ見ていたのに。航だけじゃない、湊さんだってそうだよ。遥はなにもわかっちゃいない!」
 潤の遥の呼び方がいつもと違う。
「潤、ごめん、悪かった。だからその話、詳しく教えてくれないか?俺には全く分からなかったんだ。」
 素直に話す遥に、潤は怒りを収めた。
「湊さんは…家庭教師に来てくれるときいつも遥の話ばかりして帰るんだ。勿論ちゃんと勉強も教えてくれるけど。前に遥を好きかって聞かれたことがある。航は見てて分かった。遥ばかり見ているし、必死に守ってた…女の子から。遥の恋路をすべて邪魔していたのは響だよ。」
 遥は初めて知った。
「遥…ちゃんは、誰が好きかわからないの?」
 黙ってこくりと頷いた。
 潤は静かに遥へ伝えた。「静かな場所でたった一人になってみたらいいよ。大事な人なら必ず心に思うから。」
 遥は大きく頷き、何故か両目からポロポロと涙をこぼした。
「それから、遥ちゃんが謝るのは僕じゃない。ちゃんと航に謝って許してもらうんだぞ。」
 うんうん、と何度も頷いた。