第二十五話    
 翌日、遥は学校をサボって一人海までやってきた。…台場の海だが。まあ、平日の午前中は人影もまばらだ。
 潤に言われたことは最もだと思う。
 誰と寝ても気持ちイイということは、心が伴っていないセックスだからだ。
 ただ単に快楽のみ植え付けられた身体だからだ。
「誰がそんな身体にしたんだよ…」
 一人呟いて、心に航を思い浮かべる。
「気持ちよくなるやり方、知ってたよな、あいつ…」
 自分以外の男と寝たことがあるのだろうか?
 そんなことを思ったのだが、残念ながら嫉妬心は沸かなかった。
「航じゃないのかな?」
 航の自分に向ける視線を思い浮かべる。
 すると湊の視線にたどり着いた。
「兄ちゃん…」
 好きだと耳元に囁いて遥を突き上げる逞しさを思い出す。羞恥で頬が熱くなるが、湊を追いかけてきた高校の同級生だという女子大生と湊が並ぶ姿を想像しても、何の感情も沸かない。
 隣でニヤニヤ笑いながら、「好きな人に触れられたら大きくなる」と言った響を見つける。
 響とは話が合わないし第一意地悪だから苦手だ。だけどあの悪態が睦言に変わったら…やっぱりイヤだ。
 端から順に心当たりを思い浮かべるが誰も心を乱さない。
 自分は恋などしてはいないと諦めた。
 遠くで男女のカップルがイチャイチャしている姿を見つけ、ボーっと眺めていた。
 どれくらいそうしていただろう。
 遥の胸に、潤の言う通りにある人物の顔が浮かんだ。
 一緒にいたい、直ぐに会いたいと思った人が、いた。