| 翌朝。 「おはよう」
 遥が誰にも起こされずに起きてきた。
 母親は慌てて干したばかりの洗濯物を室内にしまい始めた。
 「今日から心を入れ替えてちゃんと勉強するから」
 そう言うと自ら食パンをトースターに入れた。
 遥は初めて自分の気持ちに気付いた。
 だから釣り合う人間になろうと、努力を始めたのだ。
 「おわっ!遥が起きてる!」
 湊も慌てる。
 「うん。これからは兄ちゃんの手は煩わせない。勉強も一人でやる。だから兄ちゃんは自分のことに専念してくれ。」
 遥の、湊への決別宣言だった。
 「え?あ、あぁ。」
 突然のことで湊は頭がパニックだ。
 「いってきます」
 慌てることなく、家を出る。
 「遥ちゃん、おはよう」
 「おはよう、響。…あのさ、俺、好きな人が出来た。だからお前の気持ちは受け入れられない。ごめんな。」
 またまた突然の告白で響パニック状態だ。
 「おはよう」
 「あ、潤。おはよう。昨日は助言ありがとう。お陰でわかったよ、大事な人が。兄ちゃんと響には伝えた、つき合えないって。」
 「そうか」
 「あとは航なんだけど…言いだしづらいよな、友達だし。」
 「友達だから、理解してくれるよ。」
 「うん」
 ホームで、航を待つ。
 「おはよう」
 「おはよう」
 しばしの沈黙。
 「あの…」
 「分かった」
 「え?」
 「遥、好きな人が分かったんだろ?」
 「うん」
 「…気付かなきゃいいのになぁーってずっと思ってたのに。残念だよ。まあ、遥のヴァージンは僕がもらったから、それで我慢する。」
 ありがとう…遥は小さく、小さく答えた。
 「遥ちゃん…好きな人って誰?」
 潤が聞いた。
 
 
 まだまだ に続く
 
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