響としては、手をこまねいていたつもりはさらさらなかった。あくまでも遥の気持ちを尊重して、密やかにさらりと…つまり他人に知られないように、ということだ。
最初に気持ちを見抜いたのは航だった。中学一年の一学期終業式、体育館の裏に呼び出された。
「なんだよ、愛の告白か?」
茶化して言ったが、内心どきどきしていた。
「それは響の方だろ?」
中学時代、進学と共に遥の回りに自然と集まりつるんでいたのは遥、響、航、潤。
航以外は小学校も一緒だったが、航だけは少し家が離れていた関係で小学校が違った。
「いつからなんだよ?」
「何がだよ?」
「…男が好きなんだろ?」
心臓が早鐘のごとく鳴っていた。
「単刀直入に言えば、遥ちゃんが好きなんだろ?…手を組まないか?」
心臓のドキドキが治まる前に、いきなり止まりそうになった。
「手を…組む?って航も?」
これだけの台詞をいうのが精一杯だった。
「ああ。遥ちゃんが好きだ。友達としてではなく。」
口を開いたら心臓が飛び出しそうなほど、ドキドキ鳴っている。
「でも遥ちゃん、ブラコンだからさ。休み中、兄貴にとられたらイヤじゃないか。」
「え?湊さん?」
響は気付いていなかった、湊の気持ちを。
「会ったこと無いけど、多分兄貴は遥を狙ってる。…手を組もう。」
響はただひたすら頭を縦に振り続けた。
「まず、夏休みの宿題だ。響の家でみんなでやろうと提案して欲しい。そうしたらオレも家を提供する。持ち回りにしたいんだ…このままじゃ、オレだけずっと会えないだろ?プールはなしだ!泳げない。格好悪いのはイヤだ。」
なんだ簡単なことじゃないかと響は承諾した。
今思えば響は航に振り回されただけだ。
切っ掛けを作らされて、良いところはなんだかんだ言って航が浚っていった。
遥の初めての相手…っていうのも気に入らない。
航を陥れる方法をみつけないとな。
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