| 「遥…」 名前を呼ばれて、遥はもの凄く驚いたようだ。
 「航…と、なにしてんだ?」
 二人が歩いてきた方向は、本屋街だ。しかし、その先にはあまり知られていないがラブホテルが栗林している。
 「さ、参考書を、ね?」
 遥の頬が上気している。
 「響」
 航が名を呼ぶ。
 「何だよ。」
 「実は毎日セックスしてる。」
 耳元で囁かれた。
 「な…」
 「大体さ、同じ学校に通ってて一緒に歩いてたら変?」
 変ではないことを、響は分かっている。なにも不自然ではない、ないけれども、航の過去の行動から考えれば、先ほどの台詞はあながち挑発だけとは限らない。
 「なら、遥、一緒に帰らないか?」
 「響、オレ言ったよな?お前のことは嫌いだって。」
 「生理的に無理なのか?」
 「いや…でも鼻につく、お前のいうこと全部。」
 「ちゃんと話し合おうよ。」
 「ヤだよ」
 遥は嫌悪の表情を露わにした。
 その腕を強引につかみ、無理矢理駅へ向かって歩き出した。
 「なにすんだよ!」
 「航にばかり、良い思いはさせない。僕だってずっと遥のことが好きで、でも航に邪魔されて、遥に嫌われてて…」
 「なん…響?泣いてるのか?」
 涙が後から溢れて止まらない。
 「なんで僕に抱かれたんだよ!…忘れられないんだよ…」
 
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