| 二度と会いたくない… 
 
 冷静になれば、響にも分かる。
 どれだけ遥に酷いことをしたのか。
 だけど。
 航だって最初は強姦したじゃないか!どうして自分だけ…などと自己中心的な思いが過ぎる。
 嫌われていたことを失念していたのだ。
 もう、なにも考えられなかった。
 
 
 「珍しいな、お前が絡んでこないなんて。ついに遥を諦めたか?」
 通学途中、湊に会ったが声は掛けなかった。
 「遥、昨日何か言ってた?」
 「いや、昨日は会ってない。サークルに顔出したら先輩に捕まって帰りが遅かったからな。」
 「そっか…」
 「…この間、俺が誰と歩いてても心を乱されることはないと言われた。」
 響は湊の顔を見た。
 「自分で解決するみたいだ。兄離れされたよ。それで俺はお払い箱だ。ただの兄貴だったんだよ、遥には。」
 「…二度と会いたくないって…言われた。僕が悪いんだ…」
 「昨日、何かあったんだな…そっか…」
 二人はそのまま黙って駅に向かい、それぞれの目的地に散っていった。
 
 
 
 「遥ちゃん、顔色悪いよ?」
 潤はただ一人、幸せに浸っている。
 あれから、湊の家庭教師は続いていた。そしてその後の行為も、条件がクリアすればご褒美でもらえる。
 実の所、湊は潤に情が沸いたのだ。
 あんなに遥のことが好きだと思っていたのに、拒絶されたら手も出せない。
 潤に好意を示されたら、悪い気はしない。
 湊は、遥争奪レースから脱落していた。
 「体調がイマイチなんだ」
 「大丈夫?休めば?」
 「うん…そうする」
 クルリ
 踵を返すと家路に着いた。
 
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