| 遥は、昨日のことを航に知られているのがイヤだった。だから学校に行きたくないのだ。 「大体、航が響を止めないのがいけないんじゃないか…」
 最後は理不尽な逆恨みだ。
 しかしそう考えたら異常に腹が立ったので学校へ行くことにした。
 
 「あ」
 「あっ」
 ほぼ同時に相手を見留めた。
 遥は慌てて階段を駆け下りた。
 「遥、待てよ!昨日は悪かった。謝るから。」
 ピタッ
 足が止まった。
 「響は、謝ればすむことだと思ってたんだ。そんな簡単なことだと思われていたんだ…」
 そう言って振り返った遥の目には涙が溢れそうにたゆたっていた。
 「悩んだのに…響のこと、好きになれるように悩んだのに…。」
 「遥…」
 二人とも、遅刻しないように電車に乗るには次がラストだ。
 「話し合わないか?ちゃんと。」
 「昨日の部屋はイヤだ。」
 「わかった。じゃあ、夕方遥の家に行く。必要なら潤がいても航がいても構わないから。」
 「うん」
 二人の待つホームに、電車の到着がアナウンスされた。
 
 
 「遥ちゃん、昨日、響にヤられたの?」
 昼休み、三人でいつもの準備室へ行ったが先生は留守だった。
 所在なげに待っていたら、航の遠慮ない質問に、分かっているなら助けてくれればいいのに…と、遥は心の中で悪態をついた。
 「え?ヤられたって、響に?強姦?」
 二人してストレートに聞いてくる。
 「ヤられたよ、ぐちゃぐちゃに。すげーケツが痛い…」
 お尻をさすってみせる。
 「黙って抱かれたんだ。」
 「黙ってヤらせるわけないじゃないか!抵抗したよ!」
 「…なんで?」
 「なんでって…?」
 なんか食い違っている気がする。
 「航、何か…」
 「すまんすまん、急に校長に呼ばれてなー」
 タイミング悪く先生が戻ってきた。
 「先生、昨日の続きだけどさー」
 遥が嬉々として話を先生に振ったので、食い違いの内容は分からずじまいだった。
 
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