第四十話  封印
 パタン
 玄関ドアが静かに閉まった。
 湊のスケジュール、今日は潤の家庭教師の日。
 トントントントン
 スリッパを履いた足音が階段を上がる。
 パタパタ…パタパタ
 足音は一瞬、遥の部屋の前で止まる。が、すぐに又動きだし、湊の部屋へと消えていった。


 湊は自室に戻るとすぐに部屋着に着替えをして、バスルームへと向かう。
 その時も、遥の部屋の前で一瞬立ち止まるのだ。多分習慣になっているのだ。
 今着たばかりの部屋着を脱ぎ、バスルームに入るとシャワーのコックを捻る。
 つい30分前まで、潤の穴に突っ込んでよがらせていたモノを丹念に洗う。
 潤に欲情しているのではない、ただ、自分は遥を諦めるために、そして健気に慕ってくれる潤の気持ちが切なくて、身体を重ねてしまうのだ…と言い聞かせる。
 洗っていたはずなのに、扱きたてていた…遥の喘ぐ姿を思い出し、熱を帯びたモノをさらにピッチを上げて扱いていた。
「遥…」
 バスルームの床に、シャワーの湯と共に、白い欲望がまき散らされた。
 しかし、脳裏にはうっすらと目元を朱に染めた、潤がいた。


 パタン
 遥は静かに洗面所のドアを閉めた。
 洗面所とバスルームは隣にある。
 歯磨きをしていないことを思いだし、湊がいるのを承知でやってきた。
 まさか、湊がバスルームで自分の名を呼びながら自慰をしているなんて、予想もしなかった。
 自室に戻り、ベッドに飛び込んだ。
「どーしてオレなんだよ、みんな…」
 愛されるのは嬉しいけど苦しい。
 そして哀しい。


 明日、潤に会えない…


 遥は早朝、家を出て学校に向かった。