| 「終わったー!みんなありがとー」 七月三十一日。
 「星の王子様」の原文全訳を終えたところで、課題となっていた宿題が終わった。
 「あとは予備校かー」
 「その前に海にでも行かないか?」
 「あ、僕はパス、デート」
 一番に抜けたのは潤。
 「兄ちゃんと?」
 「ほかに誰がいるんだよー」
 もうでれでれだ。
 「航と響は?」
 「暇だけど…」
 内心は一緒に海に行きたい…のだが…。
 「じゃあ、決定!南紀白浜に行くぞー」
 「は?」
 「なに?」
 
 
 埼玉在住の三人は和歌山へは泊まりでないと行かれない。
 「大丈夫、ばあちゃんがいるんだ、あっちに。民宿やってるしなー」
 と、意気揚々、やってきた。
 「ばあちゃん、来たよー」
 久しぶりの再会に遥の祖母は大喜び。
 だが。
 「実はさ、なんだか今年はお客さんが多くて部屋は足りない、人手は足りないと散々なんだよ。」
 「じゃあオレ、手伝うよ」
 遥は躊躇いもなく言い、二人の同行者は遥のいない浜辺で遊んでも仕方がないので
 「一緒に手伝う」
 と手を挙げた。
 「部屋は離れを使ってね」
 二人、内心ほくそ笑んだ。
 こいつを閉め出せば、遥といちゃいちゃできるかも…と。
 
 
 しかし。
 民宿の仕事はハードだった。
 早朝から食事の配膳、風呂の掃除。
 午後はフリータイムで遊ばせてもらい、夕方から再び食事の配膳。
 海にも入っているので、初日はくたくたになり、三人共にすぐに寝てしまった。
 三日目にやっと、仕事になれてきて、風呂の後に談笑出来る程度にまでなったのだが、遥は途中でうとうと居眠りを始めたのだ。
 「遥?」
 「遥!」
 二人、顔を見交わす。
 「いたずら、する?」
 
 
 こら!
 
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