第四十三話  解放の夏休み
「終わったー!みんなありがとー」
 七月三十一日。
 「星の王子様」の原文全訳を終えたところで、課題となっていた宿題が終わった。
「あとは予備校かー」
「その前に海にでも行かないか?」
「あ、僕はパス、デート」
 一番に抜けたのは潤。
「兄ちゃんと?」
「ほかに誰がいるんだよー」
 もうでれでれだ。
「航と響は?」
「暇だけど…」
 内心は一緒に海に行きたい…のだが…。
「じゃあ、決定!南紀白浜に行くぞー」
「は?」
「なに?」


 埼玉在住の三人は和歌山へは泊まりでないと行かれない。
「大丈夫、ばあちゃんがいるんだ、あっちに。民宿やってるしなー」
と、意気揚々、やってきた。
「ばあちゃん、来たよー」
 久しぶりの再会に遥の祖母は大喜び。
 だが。
「実はさ、なんだか今年はお客さんが多くて部屋は足りない、人手は足りないと散々なんだよ。」
「じゃあオレ、手伝うよ」
 遥は躊躇いもなく言い、二人の同行者は遥のいない浜辺で遊んでも仕方がないので
「一緒に手伝う」
と手を挙げた。
「部屋は離れを使ってね」
 二人、内心ほくそ笑んだ。
 こいつを閉め出せば、遥といちゃいちゃできるかも…と。


 しかし。
 民宿の仕事はハードだった。
 早朝から食事の配膳、風呂の掃除。
 午後はフリータイムで遊ばせてもらい、夕方から再び食事の配膳。
 海にも入っているので、初日はくたくたになり、三人共にすぐに寝てしまった。
 三日目にやっと、仕事になれてきて、風呂の後に談笑出来る程度にまでなったのだが、遥は途中でうとうと居眠りを始めたのだ。
「遥?」
「遥!」
 二人、顔を見交わす。
「いたずら、する?」


 こら!