第四十六話  響
 遥と響は幼稚園からの幼なじみ。
 中学を卒業するまでなぜかずっとクラスも一緒だった。
 だから響にとって遥のそばにいることは当然だったし、遥も何から何まで全部やってくれる響は、湊同様家族並の存在だった。
 小学校から潤が一緒になり、三人で行動することが増えた。
 遠足のおやつを買いに行ったり、自由研究を共同でやったりと、女の子の仲良しグループ以上に仲良しだった。
 それには響が気を使いすぎるくらい気を回していたからだ。
 中学になり、航が増えてから少し風向きが変わった。
 相変わらず色々と世話を焼いているにも関わらずなぜか遥に嫌悪されることがあるのだ。
 高校受験もまんまと騙され、一人だけ違う高校。
 全て航の仕業。
 だけど航に対する怒りより、自分の気持ちに驚いた。

を、
性的欲求を伴う好意
で、慕っていたのだ。
 航と湊に指摘されて気づいたのだ。
 湊は手を引いたが、航は強引に遥を落としに掛かっている。
 響は自分がどうしたいのか悩んでいた。


「響、夕べはごめん。オレ考えたんだけど途中で失神しちゃったらしいんだ…情けないな。勉強も出来ない、遊びも中途半端、セックスも下手だったらどうやって生きていけばいいんだろう…」
 遥は布団の上に正座して響に頭を下げた。
「どうして謝るんだよ。悪いのは僕たちなのに。夕べ言ったこと、忘れて良いよ。十分思い出はもらった。」
 しかし、遥は聞こえなかったのか
「ふたりで、映画でも行かないか?」
と、振ってきた。
「え?」
「航には内緒だぜ?」
 黙って首を縦に振った。
 今まで運がないと諦めていた響だが、一筋の光を見いだした。