第五十二話  結論
着信 遥

 携帯電話の液晶に表示され、着信を告げる音楽が流れる。
 手を伸ばす。
 しかし通話ボタンを押す勇気がない。
 遥の、声が聞きたい
 言いきかせて、ボタンを操作した。
『もしもし』
「遥は、せっかちだ」
『だって!分かったから、一刻も早く伝えようと思って…』
「授業中ずっと考えてたな」
『うん』
「で?結論は?」
『響…』
「なんだ?」
『だから!響と付き合うって、決めたんだ。』
「そっか…ありがと」
 あまりにもそっけない返事に、遥は拍子抜けしたが、その後しばらく響の方からは鼻をすする音しか聞こえなかったので待っていた。
『でもさ、航とはこれからも学校で会うわけだし、簡単に振るって言うのもなんだかやな気がするんだ。』
 もっともだ。
『だから…僕の気持ちは伝えたから、えっちはしないから…しばらく僕に任せて欲しい。…好きな人が自分以外の人と仲良くするのはイヤかも知れないけど、お願い。』
「遥が手にはいるなら、それくらい我慢できる。」
 言いながら、もしも選んだのが自分じゃなかったら、前回のようにあっさり嫌いだと言われたのだろうかと頭の片隅を過ぎった。
「僕の勝因はなんだったんだろう?航の方に分があると思っていたからあんなことを言ったんだ。もう終わりにしてスッキリしたいって。」
 すこし逡巡する気配がした。
『響と航が誰かとえっちしたら、どっちを取り返しに行くか考えた。』
 17歳の健全な男子なら妥当な考えだ。
『響とえっちしたい。あれからしてないもん。』
「航とは?」
『あの日以外はしてないよ。明日の朝は、その…』
「流石に公道ではキスできない」
『そう…だよね』
「帰りに」
『うん』
 可愛い、本当に遥は可愛い。響は一人笑顔になる自分を押さえることが出来なかった。