朝から響の機嫌が悪い。
「ちょ…っと、ダメだって」
予備校の授業は今日まで。明日からは新学期が始まる。
しかし、休み時間になると航は遥にちょっかいを出す。ベタベタと身体に触れる。
大きな声で遥は僕のものだから触るなと言いたい
が、まだ何も始まっていないし、何もしていない。
全ては
帰り
なのだ。
「今日で夏休み終わりだからさ、みんなでカラオケにでも行かないか?響は進学校だからダメか?」
航は挑発しているのだ。
「…大丈夫だ」
遥は、響の手を取ったのだ、負けない。
「じゃあ。行こう」
そう言って航は遥の腰に手を回す。
航は明日も学校で遥に会う。
こうしてべたべたとまとわりつくのだ。
遥の言葉を信じている。だけど嫉妬心に勝てるほど、彼らはまだ、大人じゃない。
明らかに顔色が変化している。
「響、へーき?」
潤が心配そうにのぞき込む。
「うん。なあ、潤は心配にならないか?湊が大学で他の人と何しているかとか…」
潤の視線が前方の二人に注がれる。
「遥ちゃん、航と身体の関係持ってからずっとあんな感じだよ。気になるよね。」
ずっと、あんな感じ…
「違うよ、湊だよ。」
「大丈夫。湊さん、僕が本命じゃないことくらい知ってるし、跡取りだから未来もないんだよね。でもいいんだ、遊びでもなんでも、僕の一生の中のほんの少しの時間でも重なっていた部分があったって事実だけあれば、僕は平気。」
潤が痛ましく微笑む。
平気なんかじゃない、嫉妬心で一杯だと告げている。
「あのさ、ゲイの恋愛ってセックスしないのもありなんだって。だけど僕は無理。一度知ってしまったら忘れられない。」
潤は言っているのだ、遥との恋愛にセックスは不可欠だと。
「帰り、僕は寄り道するから二人で帰りなよ。」
潤が微笑んだ。
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