第六十話  さいころを振る
 もう、ダメかな…とは思っていた。
 五年間も響はこんな気持ちを味わっていたんだと痛感する。自業自得だとも。
 改めて遠くから眺めてみると、遥なんて勉強ができるわけでもないし、気が利くわけでもないし、誰とでも仲良くするし、可愛いし、運動神経はいいし、素直だし…なんで途中からいいことばかり浮かぶんだ?兎に角諦めなきゃ…と、一人イジイジと悩む航がいた。
 そこに、悪魔が忍び寄る…。
「遥ちゃん、響と夕べもめてたらしい…湊さん情報だよ。」
 航の耳元に囁いたのは潤。
「響にとられるのだけはイヤなんだって。航なら仕方ないって言ってた。」
 こっそり耳打ちするとにっこり笑う。
 湊の魂胆は見え見えだ。自分は蚊帳の外なので二人で楽しもうという趣向だ。
 しかし。
 目の端にため息を付く遥を見留めてしまった。
 追い縋る航、突き放す遥…ちっとも進展がない。


遥、暫く距離を置こう。友達に戻れるように

 航は、最後の賭に出た。


 遥としては落ち着かない。
 自分から距離を置こうとしていたのに、先手を打たれた形だ。しかしここでくじけたら元の木阿弥だ。じっと耐える。


 そして。
 高校二年の秋、最大のイベント
 修学旅行を迎える