第七十四話  元日
 一日の昼過ぎ。
 ほうほうの体で自宅に帰り着いた遥は、食事もせずに懇々と眠り続けた。


 コンコン
 部屋のドアがノックされた。
「入るぞ」
 湊がドアを開ける。
「…死ぬぞ」
 ベッドの端に座り、遥の髪をそっと撫でる。
「ん…」
 遥が小さく身じろぐ。
「触れただけで感じるのかよ…淫乱っていうんだ、そういうのを…」


『なんか…気持ちいい。ふわふわしてて、温かくて…この手に抱き締められたら気持ちいいだろうな…』
 夢の中で遥が思う。
 掌が離れた。
『やだ、いかないで』


「遥?」
 湊のシャツを握りしめていた。
「あのさ…まだ、好きなんだけど、遥のこと…お前が僕を選ばなかったじゃないか」
 遥の瞼がゆっくり開かれた。
「に…ちゃん?」
 遥が幼かった頃に呼んでいた「兄ちゃん」と言いたかったのだろう。遥は夢を見ていたのだ。
「遥…」
 湊の腕が、遥の身体を抱き締めた。


「どうしたの?」
「めし、食わないか?」
 抱き締められたまま、言われる言葉ではない。
「いらない…さっきまで響と航のチンポくわえてたから腹がいっぱい。」
「そんなモノじゃ、腹は膨れない」
「でも腹ん中にいっぱい出された」
 湊の中で何かが…キレた。
 そのまま遥にのし掛かり、パジャマを引き剥がした。


「いや…挿れないで…」
 力なく遥が言う。
 湊は遥の両脚をぎゅっと閉じ合わさせると、太股に自分の肉塊を差し入れた、素股というやつだ。
「遥…はるか…」
 遥は脚の間を出たり入ったりする兄のペニスを見ていた。
 脚の間が、熱い。
「兄貴、気持ちいい?」
 湊は答えずに動き続ける。
 遥は少しだけ躊躇ったが、腰を浮かせて体勢を変えた。
 湊は遥の意図するところをくみ取り位置を変えた。ほんの少しの抵抗で遥の中に収まった。
「…すご…気持ちいい…」
 湊は夢中で遥の身体を味わった。