| 「遥、朝だよ」 「ん…」
 「おはよう」
 ベッドの中、隣で微笑むのは、響。
 
 
 航は無事に医大に合格して医師への道を歩んでいる。
 響は薬学部に合格、今は新人薬剤師として大学病院の薬局に勤務している。
 遥は…ちゃんと看護大学を卒業、正看護師と養護教諭の国家試験をクリアした。
 三人は別々の大学に進学した。
 大学時代から遥と響は同棲した、航がいないのは関西の大学に行ってしまったからだ。
 今は同じ職場。
 そして大学入学から六年、航がインターンで東京に戻ってくる。
 
 
 「航、戻ってくるんだって?」
 潤は湊のスーツを受け取りながら、世間話を始めた。
 湊は実家にいた。遥と入れ替わりに潤を家に入れた。
 両親は驚いたが、分かっていたらしい、遥じゃないんだと胸をなで下ろしていた。
 …響が来て、遥を嫁に欲しいと言ったときには喜んで差し出した、変な夫婦だ。
 「うん…もめるよね」
 「どうかな?」
 湊は潤にキスしようと顔を近づけたら拒否られた。
 「あのさ…別れたいんだ」
 「え?」
 「会社の女の子に好きだって言われた。そろそろ潮時かなって。」
 「待て!潤!お前は僕が嫁にしたんだ」
 「子供が欲しいんだって…両親が」
 「嫌いになったならそう言えばいいだろ?」
 「嫌いじゃない…でもなんだか違う気がするんだ。湊のこと、ずっと憧れてた。好きだった。だけどこのまま一緒にいても何も生み出さないじゃないか」
 湊は気付いていない。潤が離れていく本当の理由を…。
 
 
 「佐藤さん、男にもセクハラってあるんですよ?」
 「遥ちゃんは可愛いからな」
 ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…と、入れ歯をカクカク言わせて笑いながら遥の尻を撫でる佐藤は、遥がお気に入りだ。今朝ももう何度目かわからないナースコール。
 「男の看護師はいいなー、抱き締めてくれるからな。女はすぐにギャーギャー騒ぐ」
 「だから、男だってイヤなら騒ぎますから」
 「聞いたぞ。インターンの航先生とちちくりあってたらしいな」
 ちちくりあう…古い…そう思いながらも笑顔を作る。
 「中学からの同級生なんです」
 「同級生だと男同士で交尾するのか?」
 …見られたのかな?遥は内心、動揺していた。
 
 
 航は遥の勤める病院にインターンとしてやってきた。やってきた初日に夜勤だったのだ。
 「急患来たらどうすんだよ?」
 「適当に…逢いたかった」
 すぐに肌をまさぐり、結合の準備に掛かった。
 「完全に響に慣らされてるよな…んっ…」
 一気に貫かれ、声も上げられず、互いに黙って揺さぶられたのはそそられた。
 「今度は響を外してやろう」
 航が不気味に囁いた。
 |