第七十九話  見えてきた道
「ただいま…って誰もいないか」
 遥が響の元に帰ってきた。
 たった一週間だった。


「航、オレさ、響んとこに帰るよ。六年一緒にいたからさ、いないと不安なんだ…あいつ看護師の女の子に人気有るんだよ。手を出すなとは言ってあるけど、オレがいない間に押し掛けられて子供なんかハラまれた日にはどうしようもないだろ?」
 航は一瞬、止めようと手を挙げかけた。でも無駄だと解った。
「ごめん。返事が遅くなって。」


「遥?」
「おかえり…今日は遅番なんだ。」
「そっか」
「帰ってきた」
「うん」
「愛してるよ、響」
「…うん。知ってる」
「だよな」


 遥がいなくなった部屋に、潤が来た。
「湊さんと別れた」
 涙をポロポロこぼしながら。
「なんで?」
「湊さんのお母さんが…気持ち悪いって…僕も遥ちゃんも気持ち悪いって…」
 航には分かる気がした。
「湊さんは構わないんだ?」
「湊さんは治せるって。興味の対象を変えさせればいいから。遥ちゃんはもう帰る家がないんだ」
 湊が独立できないがための悲劇なのだ。
「僕と、寝てみる?お互いにフリーだし…」
「え?」
「フられた」
「遥ちゃんに?」
「うん」
「そっか…しよっか」
 潤は航の胸に顔を埋めた。


 次の土曜日、航のマンションに潤が越してきた。